新兵器
ポプラトの出城までの距離が残り数十メートルとなっと処で比呂たち第三遊撃隊の面々が目にしたのは、前方の空が暗くなるほどの大量の矢であった。
比呂としては、もしかしてこうなるかも?と頭によぎったこともある事態であったが、まさか本当にドラゴニアの守備兵たちがここまでやるとは思っていなかったのだ。
…いや、よく見ると大量の矢に混じって黒い大きな塊までいくつか紛れている。
比呂「全車、対弾防御!!」
あいつら!自分がやってることが分かっているのか!?
この距離で空を埋め尽くすほど矢や岩を打ち上げるということは、比呂たちを追っている味方の軍にも甚大な被害が出ることを当然、想定したものであった。
比呂「矢を放った付近に榴弾を集中しろ!」
比呂は矢や岩での損害を減らすため、敢えて加速しながらそう指示を飛ばしつつ、ポプラトの出城の一つの正門付近に向かった。
比呂の指示を受けた高速徹甲矢砲の射手たちは榴弾の投射目標を手前の部隊から出城内部の見えない矢の射手たちに変えた。
それにしても一体どうやったらここまで大量の矢を一斉に放つことが出来るんだ?
もしかしてバリスタのような仕組みで、多くの矢を一度に大量に撃つことが可能な武器をドラゴニア軍は持ち込んでいたのか?と思った。
比呂のその考えは正しく、ポプラトに進出してきているドラゴニア軍は本国から新開発の兵器を多数、水路でもちこんでいたのであった。
これは苦戦が続くクロンパキー領での侵略戦争を打開するための秘密兵器として開発と持ち込みが進んでいたものだったのだ。
一つの発射機で射程距離が100メートル以上に及ぶ矢を同時に百本、放つことが出来る。
ちなみにこの矢は一般的な弓兵が使う矢ではなく、鏃が大型化されているので一本の重さは非常に重く出来ている。
大きな箱にその矢を収め、箱ごと巨大な弩で打ち出し、箱はヒモが取り付けられているので地面に落下するが、中身の矢はそのまま飛翔する。
最大で45度の角度で打ち上げられた矢は放物線を描きながら飛び、接近した敵軍の頭上から攻撃するのだ。
歩兵用の盾や鎧を貫通する能力をもつこの矢による攻撃は通常の矢が通じない屠龍軍の特殊戦車(四駆のこと)を倒す目的で開発されたのだ。
…だが、比呂はこの手の兵器の登場は予め予想していた。
予想していたからこそ、一気に加速して敵の懐に飛び込み、矢の投射範囲から外す対策が即、実行できたのだ。
ちなみに我々の世界では「火薬」の登場で、この手の矢を大量に放つ武器というものはメジャーになることは無かった。
近代ではソ連のカチューシャのような多連装ロケット砲などが似たコンセプトの武器として登場するが、当然威力は段違いである。
比呂が加速して矢から逃れたことにはもう一つ利点があった。
通常の矢と比べ、頑丈な矢が大量に地面に刺さっている処を通ると、いくらパンクがし難いタイヤを履いている比呂たちの四駆もタイヤが致命的な損傷を受ける可能性がある。
だが、敵の懐に飛び込んだため、地面に刺さる矢は心配しなくて済んだのだ。
比呂たち第三遊撃隊が放った榴弾が三発ほど出城内へ飛翔し、そのうち二発が敵軍の頭上で、もう一発は地面に落下して跳ね返った瞬間に炸裂した。
だが「ヨシ!」と歓声を上げる暇はなかった。
比呂たちの目前には多くのドラゴニア軍歩兵が盾と剣を構えて待ち構えていたからだ。




