嘘から始まる戦争芸術
比呂はドラゴニア軍の部隊と部隊との間を潜りながら、一路、北を目指した。
そう、目的地はドラゴニア軍の侵略軍の本拠地となっている港町のポプラトであった。
以前、ポプラトを急襲したときは町まで何もない平原が続き、町の外に貧弱な木の壁があった程度であったが、ドラゴニア軍は屠龍軍に襲撃され、桟橋や周囲の建物を吹き飛ばされてしばらく水路を使った輸送が出来なくなった経験から、町の外に真田丸のような出城のような砦を複数作ったり、町の外周に複数層の塹壕と水堀を掘っていたのだった。
以前、雅彦たちに投降してきたグルカ兵たちの証言で、ポプラトの防衛力強化の情報はかなり詳しくもたらされてはいたが、ポプラトはクロンパキーから20キロ以上離れていることもあり、ドローンでは偵察出来ないので、詳細までは分かっていなかった。
だが、第三遊撃隊を先行して飛ばしているゲルラッハからの航空映像で現状のポプラトとその周囲の様子が明らかになったのだ。
比呂「アレクシア、その動画は保存しておいてくれ!
全車に告ぐ!
我々はこれより敵軍本拠地のポプラトへ攻撃を仕掛ける。
ここまでも難しい作戦をこなしてきた我らだが、今回は更に困難な作戦を実行する。
何、心配するな。
失敗しても死ぬだけだ」
出処は忘れたが何処かで聞いたセリフを言ってみた。
それを聞いたヴァイキングたちは「へ、ちげぇねぇ」とか「はははっ」と乾いた笑いが出たがアレクシアだけは「ええええ!死ぬんですか?」と本気にしてしまっていた。
比呂「う、うむ。だが、即席で思いついた作戦だが、これは今から二千年前に中国という地域で実際に行われた戦闘を模した作戦だ。
十分、勝機はある。
安心して着いてきてくれ」
…とは言ったものの、実際はちょっと違う。
二千年前の中国って処は正確だが、実際に行われた戦闘では無い。
実際は、官渡の戦いの中で行われた戦闘の一部を後に創作された物語の中で行われた作戦がベース、というかヒントになっている。
いや、既に敵の大軍が自分たちを追っているという処までは忠実に再現出来ている(ハズ)。
そこから更にアレンジにアレンジを加え、自らの戦争芸術に昇華させてやろう、というのが比呂の秘密の思いであった。
そもそも、こんな思い付きで作った作戦を「適当な思い付きです、命をかけて下さい」なんて恐ろしくてとても言えない。
雅彦に「指揮官はいつ何時も、部下に対して自信が無い処を見せてはいけない」と言われていたから、ちょっと嘘をついてしまったのだ。
…だが、これから始まる戦いは、異世界で今後永く語り継がれていく「ポプラト急襲戦」となっていくのであった。




