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一瞬の凪

戦闘開始から半日が過ぎ、日が傾く頃になってもドラゴニア軍の最前線は小川を超えることが出来ずにいた。


厳密に言うと小川を越えて拠点を作ろうとした途端にグリステン領内の突撃や、同じくグリステン領兵の投石部隊(スタッフスリンガー)たちの猛攻によって退けられ続けていたのであった。


一方、南側も度々下馬して橋を渡ってくるドラゴニア軍重装歩兵を神出鬼没なグルカ兵たちによって悉く退けられていたのだ。


バノックバーンの南側は特に丹念に溝というか塹壕が掘られていて、橋を渡った先にはコの字形に囲むようになっている。


つまり、橋を渡った敵兵は、塹壕から現れたグルカ兵たちにいきなり囲まれることがあったのだ。


もちろんドラゴニア軍も馬鹿ではないので、橋を渡ってすぐ近くの塹壕に飛び込もうとした者たちもいたのだが、重装備が祟って過敏な動きが出来なくなっていることに加えて、大陸一足腰の強い軽装備のグルカ兵に動きの速さで敵うわけがなかった。


次から次へとドラゴニア軍はエリートである党の下級ではあるが党員である兵士たちを送り込んだが、あちこちで嬲り殺しにされたのだった。


夕方になった頃にはバノックバーンの東側や南側のどちら側にも大量のドラゴニア軍兵士たちの死体の山が築かれたのであった。


だが、総勢五万の正規兵を率いるドラゴニア軍にしてみれば、わずか数百人程度の損害は微々たるものである。


問題なのは、所々で小隊クラスの指揮官が死亡している報告が入ってくることであった。


雑兵と違い、小隊クラスでも隊長となると党内の序列も上がってくるので、彼らの損耗は無視出来なかったのだ。


そこでドラゴニア軍の指揮官は、少し早いが兵を引かせ、野営の準備を始めさせたのであった。



雅彦「おや?敵さん、引くのが早いな。


俺なら軍を二手に分けて交替で夜通し攻めるけどな?


ま、その方が俺には有難かったりはするけどな」


イーサッキ「どういうことですか?」


雅彦「半数を休ませている間、残りの半数に攻めさせてやればこちらの兵士を休ませないように出来るんだけど、そうするってことは俺らの独壇場である『暗闇の中での戦闘』ってことになる。


敵軍はソレを嫌ったのかもな」


イーサッキ「あ、なるほど。


だけど、そんなに簡単に奴らが諦めますかね?」


雅彦「当然、裏で色々チョッカイを掛けてくるだろうな。


だが、それはコチラも同じさ」


雅彦はそう言うと、全軍に向かって休息と食事をとるよう指示を出し、部隊の半数に寝るよう伝えた。


雅彦「イングリット!まずは君らの隊が寝てくれ。夜中の3時に起こすから交替してくれ」


イングリット「分かったわ!」


雅彦「ヴィルマ!君らの部隊は引き続き、待機。


夜中の3時でイングリットと交替して休んでもらう、いいな?」


ヴィルマ「ええ、分かったわ」


雅彦「ヘッダ!君らヴァイキングは北の森を警戒しておいてくれ。


うちのイーサッキを使ってくれればいい」


ヘッダ「了解。マサヒコの旦那は敵軍が夜になったら森から侵入してこようとするだろう、と見ているのね?」


雅彦「そういうことだ。


ドローンの操作は俺が引き続き行うので、敵軍を見つけたらすぐ知らせる」


ヘッダ「分かった。見つけ次第、穴だらけにしてあげるわ」


雅彦「スーリャ!君らは…好きに動いてヨシ。


夜の間こそ、君らの時間だろ?」


スーリャ「分かっておりますな、我が主君(あるじ)


では、我らは好きなように動きます」


雅彦「この戦は若干、長引く。


基本的には守りきれば勝ちだが、それでは君らとしては面白くないだろ。


だが、くれぐれも味方に死者を出すようなことは避けてくれよ?」



このような指示を出している間にドラゴニア軍でも動きがあった。


部隊長を失った隊の再編成と新たな戦術の策定である。


こうして、百人隊以上の指揮官は全て隠されている本営へと集められるのであった。

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