ヴァイキング三姉妹
二郎が意味不明のパフォーマンスをドラゴニア軍の目前で行っていたことにはもちろん理由があった。
要は陽動と時間稼ぎである。
雅彦は、明るくなった処で空からの偵察をドローンを使って行わせていた。
前日、雅彦はワイバーンに乗る竜騎兵との戦闘で肋骨を数本折る重傷を負ったが、彼がワイバーンを意地でも排除した理由は、「制空権の確保」にあったのだ。
比呂たち第三遊撃隊が使っている「ゲルラッハ」と名付けられたドローンは、量産型であるが、元々、この地で使われていたドローンは、現在では雅彦たち本隊が扱っていた。
具体的に言うと、ヴァイキング女子の三姉妹である長女のヘッダが使っていたのだ。
ヘッダは性格の異なる三姉妹の中では、物静かで気品さえ感じさせられる人物であったが、ユンボや大型トラック、大型トレーラー、スナイパーライフル、そしてドローンの操作などをほぼ一人で熟すことが出来た。
ちなみに、次女のハイディはクロンパキーで街の防御を任されていて、その勝ち気な性格と姉御気質で本国兵たちをまとめ上げていた。
三女のヘルガは臆病な処もあり、普段から喧しいので、よく姉のハイディに殴られていたりする。
(仲が悪いというわけではない)
現在は、秀明や影山の護衛、兼トラックドライバーとしてパイネに赴いている。
彼女たちに共通しているのは、前述通り、数々の重機や大型トラック、ドローンの操作、スナイパーライフルの扱いなど一通り出来るよう訓練されていたことだ。
話が脱線したので「制空権」の辺りに戻すが、バノックバーンに赴いていた長女のヘッダは現在、偽装してドラゴニア軍から隠しているユンボのキャビンの中からゲルラッハの操作をしていた。
狙うのは当然、敵の司令部である。
だが、ドラゴニア軍も屠龍軍との戦闘で色々、学んでいた。
以前、クロンパキー村がドラゴニア軍によって長期間包囲されたことがあったが、その時、秀明、影山、マルレーネたちが撤退して包囲していたドラゴニア軍の中隊長クラスの首を狩っていったことがあった。
それにより包囲軍はガタガタになり、なし崩し的に撤退させられたことがあったのだが、その敗戦の戦訓が活かされていた。
つまり、一見すると誰が司令官か、小隊長か、分からないよう工夫されていたのだ。
以前のように指揮官クラスだけ他の兵士の違う甲冑や装飾品を身に付けることはなくなり、部隊の指揮を行う際に目立つ動きをせずに部隊を動かすように訓練がされていたのであった。
ドラゴニア軍が今回、大軍を擁して侵略を再開したのはそれらの訓練が終了したことで部隊指揮官が次々と狩られるという事態を避けることが出来るようになったということがあるのだ。




