猪突猛進
怒涛の勢いで追ってくるドラゴニア軍歩兵の群れをギリギリの処でかわしながら、比呂たち第三遊撃隊はクロンパキーの西の草原を一路、北に進路をとっていた。
たまに歩兵隊の間から顔を出す騎馬隊に対しては、即座にA弾が高速徹甲矢砲で投じられ、接近戦を許すことはなかった。
アレクシア「もう少しこのままの進路と速度を維持してください!
この先に小さな林があるので、その右側に突っ込んで下さい!」
アレクシアの言葉通り、進路の先に僅かな木が生えている林が出てきた。
比呂は迷うことなく、その林のすぐ右側を目指して真っ直ぐ走った。
後追いの二台も前方のクルマの吐く煙幕を被らないように少しズラして走っていった。
比呂たちが林の横に達した時、ドラゴニア軍歩兵の群れはその林に躊躇なく突っ込んで、木に勢いよくぶつかった兵士の多くはそこで圧死した。
比呂はその異常な光景を見て、この兵士たちはあと少しで追い付くとなると、多少の障害物があっても構わず突き進んでこようとするのだ、と改めて思った。
彼らが林に突っ込んでいったのにはもうひとつ理由があった。
比呂たちを横から迫ろうとしていた部隊とは別の、真後ろから追っていた部隊が煙幕の中で比呂たちを見失って横から猛進してくる部隊とぶつかり、その勢いのまま林に突っ込んだのだ。
アレクシア「ヒロさん、後ろが凄いことになってますよ?
林にドラゴニア軍歩兵隊が凄い勢いで突っ込んで、木が何本か折れたみたいです。
…あんなになるまで走るなんでおかしくないですか?」
比呂「ゲルハルトが言うには、あのクスリを飲むと次の日とかに凄まじい反動が来るそうなんだよ。
普通なら俺らを討つのにこんな無茶はしないと思うんだが、敵軍はそれをやってきた。
つまり、今日で俺らを確実に潰そうとしてきているわけだな。
あの狂気を跳ね除けるには、我々もそれなりの覚悟と決断が必要なんだと思うよ」
アレクシア「覚悟と決断、ですか?」
比呂「ああ、俺らがこれからやろうとしているのは、ここまでのリスクを犯して狂気に走った10万に及ぶ敵の大軍を一気に無力化することだ。
『無力化』と言えば聞こえはいいけど、要は『虐殺』だよ。
自分と自分が護ろうとしている人や物や場所を護るのであれば、それに相応しい犠牲を払う必要があるんだ。
これまで、なるべく敵も味方も死人が出ないような作戦を考えてきたつもりだったけど、敵は遂に超えてはいけない一線を超えてきてしまったんだよ。
だからこそ、俺らも、いや、ここでは『俺』こそが非情にならないといけないと思うんだよね。
今更だけど…」
アレクシア「ヒロさんだけにそんな重荷を背負わせるわけないじゃないですか?
私も、母も、スピスカ=ノヴァの住民全員も、パイネの人たちも、同じ重荷を背負う覚悟はとうの昔に出来ています!
ヒロさんは自信をもって作戦を立案して下さい!
私たちがなんとかしてみせますので!」
アレクシアはそう、珍しく大きな声で力説するのであった。




