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丘の上

歴史の中で小部隊が最期に丘の上で全滅した例は数多くある。


古代から中世にかけての砦や城は小高い丘の上に築かれることが多かったのでそれも含めると更に増えるが、激闘の果てに丘の上に陣取り、最後の一兵まで戦った例で有名なのは、映画「300(スリーハンドレッド)」で有名な、テルモピュライの戦いでスパルタ兵が最期を迎えたのも丘の上とされている。


ゲルハルトは、雅彦や比呂と会ってから、彼らから戦術や戦略について学んだ中で、テルモピュライの戦いについて知ることになり、彼らがいかにして全滅したかを知っていた。



ゲルハルトにとって、「日本」と繋がったことは彼の人生にとって最高のチャンスであり、幸福な出来事であった。


彼は若くして部隊を率いて戦ううちに、誰から学ぶという訳でもなく、戦術と剣術については戦場で学び、絶望的な戦いでも生き残る術を身に付けていた。


だがこれはあくまで経験から学んだことであって、学問としての知識はほぼ無かった。


だが、戦術面での師匠となった比呂から学ぶように見せられた数々の動画で、彼は戦術には数多くのバリエーションがあり、またそれぞれ歴史があることを知ったのだ。


例えば、雅彦や比呂がこの世界に来て初めて導入したのは、長さが4メートルもある鉄パイプを加工した長槍を使って「叩く」という戦法であったが、それなどは日本の戦国期に確立した戦法だと知った。


ちなみにドラゴニア軍や北方諸国連合で使用される槍は長くても2メートル程度なので、その倍近くも長い槍など彼らは聞いたこともなかった。


だが、ゲルハルトたちヴァイキングが雅彦の元に降っての初戦で、林道に幅一杯に広がり、突進してくるドラゴニア重装歩兵に対して槍の穂先を並べて勢いよくぶっ叩くと、単純に突くより高い攻撃力を発揮したのだ。


弓にしても日本人が持ち込んだ物は彼らが使用していた物とは随分違った。


中には弓の端に滑車が二つ付くタイプの物もあったが、日本人が大量に持ち込んだのは長さが2メートル以上もある、現地で使う物の3倍以上の長い弓であった。


現地の弓は矢を親指の根元の上に乗せて撃つのだが、和弓と呼ばれるソレは、弓の右側に矢を添えて親指の先に乗せて放つ。


また矢を放つ時は手首を外に返すので、手首に弓の弦が当たることもない。


最初は「なんじゃこれ」と思っていたが、いくらか練習して慣れてきたらこれが非常に使い易く、また引く力が軽い割に良く矢が飛んだ。


比呂から話を聞くと、なんとこの長い弓を日本では昔、騎馬兵が使っていたというのも驚きであった。


ドラゴニア騎兵などは馬上で取り回しが良い短弓を使っていたが、長い弓でも弓の下、三分の一の辺りを持つことで、馬上でも問題なく使えた。


こういう一つ一つがゲルハルトにとっては画期的であったが、話しを聞くと「こういう武器や戦術はもう廃れて無くなってしまっている」という。


ゲルハルトにとってその言葉は衝撃的だった。


彼らが若い頃から戦場で命懸けで学んだ戦術などが、科学文明の進んだ世の中では全く通用しなくなっているというのだから。


だが、その言葉の意味はすぐにわかった。


ランクルを始めとした内燃機関で動くクルマやユンボの存在。


それと100メートル以上離れていても重装備を施していたドラゴニア兵を一撃で撃ち抜く威力と精度を持つライフル銃の存在。


これらがあれば確かに従来の戦術や武器は廃れる。


ゲルハルトは数多くの動画や映画を観て、それらの兵器を使用した現代戦の知識をこれでもかという勢いで取り込んだ。


これらの武器や戦術があれば、ドラゴニアを押し返し、自分たちの生存圏を確保出来る。


だから、学ぶことが楽しくて仕方なかった、


ある時、雅彦はゲルハルトに対してこう言った。


雅彦「ゲルハルト、お前たちはこの戦の後は何を望むんだ?


ドラゴニアや他国に攻め込み征服地を広げることか?」


ゲルハルト「我が望みは、強敵と戦いこれを撃ち破ることです。


圧倒的な強敵に対し、新たな武器と戦術で撃ち破ることが出来たらさぞや気持ちいいことでしょうなぁ!」


雅彦「そうか、ならば俺の元で戦え。


その望みは必ず叶えてやる」



ゲルハルトはパッと唾を剣の持ち手に吹きかけ、グイグイと剣の柄を握りしめてながら皆に檄を送った。


ゲルハルト「この丘が我々の『テルモピュライ』だ!


だが、我らはスパルタンではない、『ヴァイキング』だ!!


我々は生き残るため戦う!


援軍が来るまでここで踏ん張るぞ!!」


その言葉と共に、クラウス、ルーカス、ゲルハルトの三人は、クルマとクルマの隙間から侵入してこようとするドラゴニア兵に対して突進していくのであった。

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