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新たな戦術と新兵器の本格投入

今回の援軍は新たに調達していたランクルを中心に編成したものだったが、まともに接近戦が出来るのは比呂のランクル80豪州仕様くらいで、人員輸送用のトループキャリア、消防車などに至ってはノーマルに近い状態でタイヤのみをマッド系に替えている程度。


ランクル40に至ってはボディの大半がロールケージで作り直されていて、乗員はモロに露出されていた。


今は夏なのでまだ良いかもしれないが極寒の冬だと死んでしまうだろう。


と、いうことでこれまでの感覚ではとてもじゃないが戦闘出来るような代物ではなかったのだが、武装がこれまでの屠龍軍の物とは大幅に変わっていた。


元々、比呂のハチマルはドローン用の移動運用基地、兼 指揮車両みたいな扱いだったので、ゲルハルトやヴォルフラム、貴史のクルマみたいに敵中に突撃して、接近戦用の武器を振り回して戦う…というのを想定していないが、ある程度の防弾・防刃加工は施されていた。


それでもフロントガラスや側面の窓には外側に頑丈なポリカーボネート製の透明な防弾板が貼り付けられていたり、ボディ全体を覆う形で厚さ1センチのゴム板が貼り付けられていた程度だ。


雅彦のランクル73のようにアルミ板でボディ全面を覆われていたり、


今回の援軍で選ばれた四台の戦闘スタイルは完全に「遠距離戦」を想定したものだ。


ドローンなどを使い、敵の存在を少しでも早く察知し、敵の攻撃範囲外から攻撃を仕掛け、一気に殲滅する、というものだ。


今までは火薬を使った兵器が少なかったために、あれこれ武器を工夫して作成していたのだが、「高性能炸薬」の合成と量産化がスピスカ=ノヴァで可能になったため、遠距離かつ広範囲に敵を攻撃する手段を得たのであった。


前回の戦闘で雅彦の本隊やゲルハルトの第二遊撃隊が敵軍を一気に葬り去る爆薬の集中運用をしたが、ひとまず問題なく使えることが分かったので、こうして量産品を前線に可能な限り持っていくことになったのである。


逆に言うと、この高性能炸薬の量産化が少しでも遅れるたら前線で戦う雅彦たち屠龍軍は敵の圧迫に耐えきれずに崩壊していたかもしれない。


現実に、今は各隊ともに弾薬はほぼ底をついているので敵の進軍を食い止めることが出来るかどうかの瀬戸際にいるのだった。


スピスカ=ノヴァの住人たちに見送られて進発した比呂が率いる第三遊撃隊(仮)は、新たに調達したドローンを飛ばしながら一路、クロンパキーへと向かった。


クロンパキーからスピスカ=ノヴァへ無線で伝えられた情報では、北のポプラト付近まで強行偵察に出ていた第二遊撃隊が敵軍約10万から包囲されそうになったが脱出してクロンパキー付近まで帰っているそうだった。


と、いうことは比呂たちの北には軽く見積もっても10万のドラゴニア兵がひしめいているわけだ。


雅彦と対している部隊は約五万、比呂たちの北には約10万、これだけで15万もの大軍がこのグリステン領に進出してきていることになる。


彼らは砦や塹壕などで防御陣地などを構築しながら、少しずつ我が方へ圧力を掛けて来ているのだ。


今の時期に雅彦を追って五万ものドラゴニア重装騎兵をクロンパキー付近に送ってきたことは、はっきり言って愚策だとは思うが、敵軍が雅彦がこちらの総大将であり屠龍軍の精神的な支柱であることを知っていて深追いしてきたとするなら、まだ理解出来る。


実際、雅彦は負傷しているようだった。


比呂「遂に敵はワイバーンまで派遣するようになったんだな」


運転しながら思考を巡らせていた比呂は、そう独り言を言った。


アレクシア「ここら辺ではワイバーンは滅多に見ることが出来ないんですよ」


グリステン領は草原が多く、彼らの餌となっている小動物はあまり多く存在しないからだ。


ワイバーンの生息地は本来はもっと南で領土が極めて広大なドラゴニア領の中でも南方に位置する巨大な森であった。


ここにはワイバーン以外にもモンスターが大量にひしめいていて、ドラゴンもその一つだった。


つまり、ドラゴニア軍はワイバーンを軍で運用するために本国から大量の肉を持ってきていたのだ。


何度も言っているが、この大量の運用能力こそがドラゴニア軍の強さの証なのであった。


このドラゴニアの脅威に対抗するには、現代兵器の運用が欠かすことが出来ないのだ。


比呂は坂道を降りながらこれから起こる戦争に思いを馳せるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドラゴニアは兵站を理解している、或いは理解しつつあるという事ですね。
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