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久しぶりに浮いたハナシ

若いヴァイキングたちには、この一年余りのスピスカ=ノヴァでの滞在で多くの彼女が出来ていた。


…と言っても性に奔放な彼らは決まった相手を作らず、多くの女に手を出していたのだが。


彼らの恋愛(?)対象は主に「メイド」の女の子たちで、彼らが元々、村に住んでいた女の子たちを口説くことは滅多になかった。


…というのは、彼らヴァイキングにとってはスピスカ=ノヴァの女性は雅彦の所有物だと(勝手に)思っていたからだ。


でも、まあ、若い男女が長い間同じ空間で時を過ごしていたら仲良くなることはあるもので、いくらかのカップルは誕生していた。


この街で「メイド」と呼ばれている女の子たちは、ドラゴニアとの最初の本格的な戦闘で秀明と影山によって保護された、元々は性奴隷や兵士たちの身の回りの世話をする者としてドラゴニア本国から連れてこられた女の子たちである。


エマやアレクシアという、元々村に住んでいた女の子たちはヴァイキングたちが思っていたように、彼女たち自身も「日本人男性たちの所有物」だと(勝手に)思っていた。


だから、こちらの世界に最初にやって来ていた、雅彦、比呂、秀明の三人は特に彼女たちから人気があり半ば「神格化」されていた。


だが、ご存知の通り雅彦にはヴィルマとイングリット、比呂にはアレクシア、秀明にはエマがそれぞれ「くっついている」と(勝手に)思われていたので、彼ら三名には他の女の子たちも手を出さないよう、暗黙の了解みたいなものが出来ていた。


雅彦はヴィルマとイングリットを将来的に娶るつもりでいたのだが、比呂と秀明については微妙である。


比呂については「相手は未成年の子供だし」という心理的なブレーキが作用していたし、秀明については「相手は20歳近く若いし」という、これまた心理的なブレーキが作用していたので、仲は良くなっていたし、ある程度の「大人の関係」はあったがなかなかそれ以上、踏み込むところまでは行っていなかったのだ。


ということで次に村の女性たちからターゲットにされたのは影山氏であったが、彼は既婚者ということで脱落。


そうこうしていたら秀明の弟である秀二がやって来たが、これまた妻帯者で脱落。


次に来た日本人は秀二の息子で23歳、しかも美男子で体格もヴァイキング並みの貴史だった。


ここで起こったのが「貴史フィーバー」だった。


だが、貴史は現地語を全く話せないのと、意外と身持ちが硬いこともあり、村の女性たちと親しくすることはほとんどなかった。


村の女性たちが何もしなかったのかというとそんな事もなく、ヴァイキングとの訓練時に飲み物やタオルなどの差し入れをしてみたり、食事の用意など色々と手を替えたアプローチをしてみたが、貴史は普通に対応するだけで彼女たちに興味を示そうとはしなかったのだ。


そうなると彼女たちの興味は「貴史は女性には興味がないのではないか?」という点に移った。


最近、日本から流れてくるコンテンツではBL物などが多くあり、村の女性たちの中にはそれを特に好む者たちもいた。


彼女たちは貴史とヴァイキングたちの訓練をしているところを見ては「ヴォルフラムと出来てるのかしら?」


「いや、渋い隊長のゲルハルトじゃないの?」


などと腐った会話をしていたのであった。


だが、貴史も戦場に出るようになったある日、突然、彼女たちを驚愕させるニュースが飛び込んできた。


それは「貴史さんがパイネで年端も行かぬ少女を拾った」というものであった。


そうなると彼女たちは「えっ!!貴史さんの好みは幼女だったの!!」ということになり、しばらくこのネタがスピスカ=ノヴァでは定番のネタとして彼女たちの間で交わされることになったのである。


実際の処、貴史にもなぜあの少女をあの店から買い上げたのかは分からなかったが、少なくとも変な下心で動いたわけでは無かった。


だからクロンパキーに連れて帰ってからも貴史の宿泊する家には住み込んで貴史と同居はしていたが、まぁ普通の妹と同じような感じで貴史も接していたのだ。



まあ、このようにスピスカ=ノヴァの女性たちにとっては不遇な時期がしばらく続いていたのだが、貴史がこちらの世界に来た頃から、日本人が爆発的に増えていくことになる。


そうなると彼女たちの中にも、川北電機や川北特殊鋼管などの社員と付き合う者が出るようになり、貴史フィーバーも沈静化していくのであった。


今回の比呂たちの出撃ではヴァイキング9名が一緒に出撃することになったが、彼らを見送る女性も多くいた。


ほとんどは「メイド」たちだが、その中にはバーを経営している真澄もいた。


ヴァイキングたちは真澄にとっても良い常連客であったため、こうして顔を出していたのであった。


真澄「貴方たち!気を付けて行ってらっしゃい!!


帰ってきたらまた私の店に来てね、たっぷりサービスしてあげるから!」


すっかり上手くなったドイツ語でそう言うと、若きヴァイキングたちは「おーーー!!!」っと馬鹿騒ぎを始めるのであった。


あちこちで恋人といちゃいちゃし始めるのでそれを見かねた恵が、


「あー、そろそろいいかな?!


では、比呂君!気を付けていってらっしゃい!


この街は私らが責任持って守るから安心してドラゴニアをぶっ潰してきて!」


そう言うと彼女はポケットから火打ち石と火打ち金を取り出して切り火をするのであった。

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