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異世界 接近阻止戦術

以前、比呂が村の防御のために考案した戦術は「A2(Anti-Access)戦術」だと書いたことがあります。


日本語に直すと「接近阻止戦術」です。


なぜ、これを選択したのかをカンタンに説明すると、村の戦力となる女性は腕力もそれほどなく、実践経験もほぼない。


そんな彼女たちに剣や槍を持たせて接近戦などをさせたら命がいくらあっても足りない。


そこで「最初から敵を絶対に接近させない」という戦術を考案したのだった。


先日の「火炎瓶」は鉄製の甲冑で完全武装した騎馬兵などに対する攻撃手段として考えたものだった。


これなら腕力のない女性でも甲冑を着た兵士に対して有効な攻撃が可能だと思われたからだ。


また火炎瓶は味方と敵の間に投げて、地面に焔を起こすことで敵を短時間だが寄せ付けない効果もある。


そして、火炎瓶と共に今回のA2戦術の要となってくるのが「有刺鉄線で作る鉄条網」による物理的な敵の足止め手段だ。


有刺鉄線はただ単に横にピンと張っても効果は少ない。


張るのであれば杭を打ち、横に何本も張るか、もしくはぐるぐると螺旋状に設置する方法がある。


即席で鉄条網を貼るのは後者の螺旋状に有刺鉄線を設置するのが楽だが、かなりの長さの有刺鉄線が必要となってくる。


ちなみに比呂が日本で買ってきた有刺鉄線は20メーター千円程度で売っているものだ。


今日は有刺鉄線の設置の実演ということで、実際に村の防御線にする予定の関所跡に抜ける道の途中にある小川を横切る橋の周辺に鉄条網を設置してみることにした。


比呂はまた村人を引き連れて村の正面に広がる畑の中の道を東に向かい、数百メートル離れた場所の端までやって来た。


この橋は幅は3メートル程度、長さは7メートル程度の小さな橋で、小川は約2メートルほど下を流れていた。


小川に下りるのは簡単で緩やかな斜面を登り降りすればよいだけなので、馬や人でもやろうと思えば小川を渡ることが出来る。


そこでカンタンに小川を渡れないように川の両サイドに鉄条網を設置してやろうというわけだ。


こうすれば橋の上さえクルマや柵などで塞いでしまえば敵は簡単に接近できなくなるわけだ。


比呂はこれらをカンタンに村人たちに説明して、持ってきていた有刺鉄線を小川の横に実際に少しだけ設置してみせた。


鉄の杭を地面に打ち込んで、それに有刺鉄線を針金で固定するだけだ。


とりあえず長さ5メートル程度に鉄条網を敷いたわけだが、わずかこれだけでも人や馬は簡単には乗り越えることが困難になる。


今回は小川の手前に設置したわけだが、敵は小川の斜面を登ったと思ったら目の前に螺旋状に張り巡らされた鉄条網が現れるわけだ。


有刺鉄線というものは本当に厄介な代物だ。


いくら鎧で防御していても関節部に食い込んだら痛いなんてものでは済まないし、手で掴むとこれまた怪我をしてしまう。


突破するにはワイヤーカッターなどで切りながら撤去していくか、毛布などで覆って乗り越えるか、戦車などで踏み潰すかどれかを使わねばならないが、中世では有刺鉄線などはないので初めて見ると面食らうことになるだろう。


比呂は試しに設置した鉄条網にそこら辺にあった木材をそこに立て掛け、火炎瓶を鉄条網に向けて投げてみた。


すると鉄条網に立てかけておいた木は猛烈な勢いで燃えたが、当然のことながら鉄製の鉄条網はその場で焼けずに残った。


鉄条網の良いところはこのように火炎瓶との相性が良いことである。


もし木で作った柵に火炎瓶を投げてしまうと当然の事ながら焼け落ちてしまうのだが、鉄条網なら問題がない。


また鉄条網は弓矢や弾丸や水も通るので、これまた非常に使い勝手がよい。


そう言う比呂は荷台から空の一斗缶とインパルス消火銃とショットガンを取り出した。


インパルスは予め準備を済ませておいたので、一斗缶を鉄条網と手前に置き、それに向けてフルパワーにしたインパルスを発射した。


「バシュッ!!」というかなり大きな音と共に噴射された霧状の水が一斗缶に直撃して跳ね飛んだ。


あまりの勢いにビビる村人達。


5メートルほど離れていたがそれでも一斗缶は派手に凹んでいた。


比呂「このようにこのインパルスは物を破壊することも可能だが、元々は火を消す目的で作られた物なので火炎瓶などで火事が起きてしまった場合などでも使います。


また敵の騎馬兵なども短距離であれば落馬させることが可能だ」


ここで比呂はポケットの中からある物を取り出して話を続けた。


比呂「だが、敵に水を掛けるだけの武器ではありません。


今回はこのトウガラシを混ぜた水を使います」


当然のことだが、こちらの世界に唐辛子は存在しない様なのでこれも皆に廻して触ってもらった。


比呂「これは食べるとものすごく辛いものです。


その成分はカプサイシンと呼ばれていて、もしこれが目に入ってしまうと猛烈に目が痛みます。


1日くらいは眼が見えなくなるほどです。


今回はそのカプサイシンウォーターを敵にぶっかけます」


ちなみに英語のウォーター(Water)は独語ではバッサー(Wasser)だ。


比呂が面白いジェスチャーをしながら説明したので笑いが出たが、これは下手をすると失明しかねない。


火炎瓶と同じく、もしこのカプサイシンバッサーを使うときは目に入らないよう注意して下さいと伝えた。


自分で言いながら「カプサイシン・バッサーか、なんか格好いいな」などと思った。



ここで比呂は「敵を殺す」のではなく、「敵の戦力を無力化する」ことを最優先にする、と村人に伝えた。


敵を殺してしまうと単純に敵の戦力は「マイナス1」だが、戦闘が出来ない程度に怪我をさせたり催涙水(カプサイシンバッサー)などで無力化したら敵はその兵士を助け出したり後ろに送るなどしなければならなくなり、敵の戦力はマイナス2にもにもなる、という現代戦で使われる概念を伝えた。


なるほどという感じで頷く村人たち。


ただ、戦いというものは非殺傷兵器ばかりで成り立つほど甘いものでない。


そこで我々日本人は「二つの武器」を持っている。


一つはこれ「銃」だ。


比呂はベネリのM3ショットガンを取り出してチャンバーに一発だけ装填し、先程の一斗缶に向け発射した。


今度は先程のインパルスを遥かに上回る轟音を響かせ、一斗缶はたちまち穴だらけになり跳ね飛んだ。


「きゃあ!」と小さく悲鳴をあげる村人たち。


表情は驚きと恐怖が混じったものが浮かんでいた。


比呂は転がっている穴だらけの一斗缶を拾い上げながら、


「これは数が少ないのであまり使えない武器ですが、鉄製の鎧兜を着込んだ兵士もコレには全く歯が立ちません。


この一斗缶のように敵の鎧も穴だらけになります」


意味がわかった村人たちは息を飲んでその穴だらけとなった一斗缶を見つめた。


比呂「もう一つの武器は、このランドクルーザー70(ナナマル)です」


そういうと比呂は運転席に乗り込み、珍しくアクセルを全開にして畑の中の道を爆走して見せた。


丘の麓まで走り、アクセルターンで方転して戻って来た比呂は急ブレーキをかけて、四輪をスライドしながら停車して見せた。


土煙の中から降りてきた比呂はこう続けた。


「走る速度は馬の数倍の速さがあり、力は115倍あります。


またクルマは頑丈な鉄で覆われて、先程の勢いで接触した馬や人は一撃で即死します」


多少大げさに話しているが、実際その通りだ。


ただ、今ここにある親父のナナマルは敵を跳ね飛ばす攻撃をすることは想定していない。


やるとするなら最後の手段だろう。


ちなみにこのランクル70(ナナマル)は3.5リッターのディーゼルエンジンで雅彦が持つランクル73(ナナサン)より排気量も小さくパワーも15馬力ほど少ない115馬力だった。


あまりの格好良さに手を胸の前で組んでウルウルとした目で見つめる村の女性たち。


その様子を見た比呂は「あ、しまった。やり過ぎた」と軽く後悔するのであった。



無自覚系モテ男子には困ったものです(笑


次回は兄の主人公 雅彦の物語を中心にしたいと思います。


お楽しみに!


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