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鈴木二郎と川北恵と川北の呪い

鈴木二郎のサファリY60(ショート)は鈴木と共に秀明の鉱山から“門”をくぐって“はじまりの丘”に到着していた。


“はじまりの丘”というのは雅彦が名付けたもので、スピスカ=ノヴァの西にある小高い丘で、頂上付近が日本と繋がっている場所だ。


繋がっているといっても見えない門を潜れるのは無機質の物質か、もしくは川北の血が入っている者と彼らが運転する車に同乗した場合に限られていた。


これについてはスピスカ=ノヴァの住民も含め、多くの日本人たちも試したが、やっぱり通過出来るのは何故か川北一族だけだったのだ。


ちなみに日本側と異世界(ミッテレルネ)との間を繋げている門は無機質な物であれば通過出来るようで、電気、水、コンベアに載せた物資(生き物を除く)は川北一族の力を借りなくても往来出来る。


そこで今のところは電気や水、軽油やガソリンを日本からスピスカ=ノヴァへパイプラインで送っているが、スピスカ=ノヴァへ進出している企業が増え、工場などで電力使用量が増えてきたので日本側の秀明の鉱山内の送電システムを増強して電力需要の増加に対応する工事なども行われていた。


鈴木二郎は当然のことながら川北一族ではないので単独で門をくぐることは出来ないので、助手席に川北の人間が同乗していた。


その女性は川北恵(かわきためぐみ)、川北電機の現社長の娘で今年で28歳になる。


雅彦や比呂は川北の創業者のひ孫の世代だが、恵も同じくひ孫世代だ。


彼女は有能な人材で川北電機の専務となっていたのは単に創業者のひ孫であっただけではなかった。


彼女はこれまでインターネットマーケティングの世界を歩んできていたのだが、社長の「これからの時代はミッテレルネに活路がある」という号令で、全くの別分野である開発部門のトップとして赴任してきたのだった。


これにはもう一つの事情もある。


銃器開発の一角を任された川北特殊鋼管は川北一族は誰も居なかったからだ。



先にも話した通り、地球と異世界を往復するには川北一族の人間の助けが要る。


雅彦や秀明、比呂、貴史は専ら戦場に釘付けにされることが多く、また秀二はスピスカ=ノヴァの建築ラッシュに大忙しで、基本的にスピスカ=ノヴァに常駐する川北一族が誰も居なかった。


人の移動には必ず川北の人間が同行せねばならないので、そういう意味でも適任とされたのだった。


恵は典型的なキャリアウーマンタイプの女性で、学生時代はクソ真面目な性格が祟って彼氏はなく、有名大学を卒業後はすぐ川北電機に就職したので、周囲からは一目置かれる存在となったのが逆に仇となり、これまた彼氏などはほとんど出来ない「残念な子」であった。


ちなみに外見はというと、そんなに残念な子というわけではなく、身長162センチのスラっとした体型で髪はショートカット、整った顔立ちに2ポイントの眼鏡で「学級委員長でよくいるタイプ」として社内の男性どもから、密かに人気があった。



この物語の「委員長キャラ」はスピスカ=ノヴァのエマが居るが、彼女はホワッとした雰囲気のある巨乳とやや豊満体型と腰まで伸びた髪を編んでいるのに対して、恵はキリっとした雰囲気の貧乳(失礼)体型で、「恵ちゃんにハイヒールで踏まれてみたい」というバカな男どもには密かな人気があった。


これまた余談だが、川北一族はなぜか昔から「男腹(おとこばら)」な一族で、圧倒的に男性が多い。


創業者の8人の子供たちは全て男で、川北マテリアルの道弘の子供もほとんど男、秀明の兄弟も男2人に女1人、秀明の子供も雅彦と比呂と男だけ、秀二の子供も貴史と下に弟1人、と言った感じで8割近くは男が産まれる一族なのであった。


そしてもう一つ共通点があるとしたら、「美形が多いのだが女性は貧乳(失礼)が多い」という事があった。


これも理由がハッキリしない。


創業者や子供たちが娶った女性たちには胸が豊かな女性も多かったのだが、その子供たちはなぜかそれほど豊かではない女性が産まれるのである。


これは一族の男どもの中では「川北の呪い」と呼ばれていた。


創業者も含め、その子供たちの多くは正妻以外に多数の妾さんを囲っていたのが原因じゃないのか?とか、「創業者がなんらかの呪いを受けていたんじゃないのか?」などまことしやかな伝説として語り継がれてきていたのだ。


恵はマジメであったので、最初に「異世界」の話を父親である川北電機の社長から聞かされたときは「何を冗談言ってるの?」と取り合わなかった。


だが、比呂とアレクシアの2人が川北電機の本社に訪れた時に社長との面会に同席されられたことで「本当に異世界ミッテレルネはあるんだ!」と実感させられたのである。


アレクシアが語る「異世界」の話は、圧倒的な説得力があった。


数年前まではスピスカ=ノヴァという辺境の村で細々と、だが幸せな暮らしを送っていたのだがある日、ドラゴニアの騎馬兵たちの襲撃に遭い、村の男性たちが皆殺しになった話やそこから始まった女子供だけで村を守る生活、そして一年前くらいに「始まりの丘」から雅彦や比呂、秀明といった日本人が現れ、村人との交流が始まったことなどが次々と彼女の口から語られた。


そして再び起こったドラゴニア騎兵の襲撃と、それを撃退した戦闘。


千人規模の襲撃を村人の日本人3人だけで撃退した話とヴァイキングの降伏と加入。


そこから始まる数々の戦闘では、アレクシアは常に比呂の横にいた。


その話を身を乗り出して聞いていた恵。



川北電機の開発部門が比呂たちに協力し始めたのは、最初に起こった戦闘の頃からで、ドローンを始めとした武器の調達に協力したことで戦闘はこれまで何とか有利に進めることが出来た。


今現在は武器開発部門のトップである田中技師がスピスカ=ノヴァに赴任していて、川北電機の極秘の武器開発を主導していることが社長の口から恵へ明かされた。


恵は、川北電機がこれまで国の防衛産業の一角を担っているということは当然知っていたし、その事に対して誇りに思っていたが、彼女がこれまで扱っていた商品は主に民生用の物ばかりなので、軍や警察の一部、海上保安庁などへの納入される武器などの製品などについてはほとんどタッチして来なかったのだ。


恵「それじゃあ、異世界とかの話は本当に存在していて、私がそちらの世界に渡って武器開発部門の統括をすればいいって事?」


社長「そうだ、だからプロジェクト・ミッテレルネの話をしたじゃないか。


嘘だと思っていたのか?」


恵「そんな荒唐無稽な話、信じろという方がおかしいんじゃない?」


社長「それはそうだが、前にも言った通り、このプロジェクトは川北電機の未来を決めるだけでなく、日本国の未来まで左右しかねない最重要プロジェクトだ。


我が社が開発するドローンは海自や海保で既に導入されているが、隣国のドローンの質も量も圧倒的だ。


これらを効率よく撃退するには、我々も銃器やミサイルなどの開発に本格的に着手せねばならないが、その現場の指揮を恵にやってもらいたい。


最新の武器開発は我が社だけではどうにもならないので他社との連携が欠かせないが、恵なら出来るだろう。


ここに居る比呂君もうちの田中君と既に協力してくれているので、恵も全力で比呂君の要望を叶える方向で動いてくれ」


恵「分かったような、分からないような…とにかく頑張るわ!比呂君、アレクシアさん、これからよろしくね!」


こうして川北恵は秀明の鉱山で元テストドライバーの鈴木と合流してミッテレルネへとやってきたのであった。

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