爺さんからの贈り物
秀明は珍しく白のワイシャツ、下はジーンズ、靴は革靴、という姿で駅のホームに立っていた。
トレードマークのDIESELのキャップやグラサンは外していた。
見事な「ちょいワル系オヤジ」(死語)の姿がそこにはあった。
今回、このような格好をしているのは彼からすると叔父さんに当たる、川北マテリアルの社長に会いにいくからだった。
正直、結婚式だとか葬式の時しか会って話しをしたことがない人なんだが、やたらと愛想がよい人だという記憶がある。
駅前のタクシー乗り場でタクシーの運転手に「川北マテリアルの本社工場へ」というとすぐに出発した。
こちらに来ることは滅多にないが、確かこの街のどこかに爺さんの銅像が立っている公園があるとか聞いたことがある。
タクシーは工場地帯に入り、広い通りをいくつか曲がりながら入っていくと、お目当ての川北マテリアルと書かれた看板のある工事の正門にたどり着いた。
おー、うちの会社と違ってとてつもない規模だ。
正面の門が片側三車線もある(汗
門から中を見ると遥か彼方に海が見えるので海沿いに作られた工場なのだろう。
守衛のおっちゃんに「社長とアポがあるのだが」と聞いたら早速一番手前にある5階建てのビルの応接室に案内された。
するとそこにはすでに叔父の川北 道弘が居た。
「おー、秀明じゃないか!元気してたか!葬式以来だな!」と相変わらずの大声で話しかけてきた。
道弘は親父の腹違いの兄なのだが、親父と違って80を過ぎても元気そうだ。
道弘は秀明な親戚の中でも馬が合うのか、昔から会えば楽しく盛り上がっていた。
親父とかの話や最近の景気の話など一通りの世間話をした後、秀明は早速ビジネスの話を切り出した。
秀明「道弘さん、今回は実はビジネスの話で来たんだ」
そういうと鞄から例の金塊を持ち出して道弘に渡した。
道弘「これは、金か?それもかなり純度が高そうだが、どうしたんだ?」
そこで秀明は、この金はある所から入手したものだ。
またこれからも継続的に入手出来る。
違法行為で入手したものではない。
これを叔父さんの会社で換金出来ないか?
ということを聞いてみた。
道弘はその突飛な申し出に対してしばらく考え込んでいたが、
道弘「まぁ、正直言えば仕入れ元がどこから仕入れた物であるかはウチには関係ない。
ただ、このご時世だ。
お前を信じないわけじゃないが、もし万が一のことがあれば会社としては大きな傷を負うことになってしまう。
違法性がないということを証明出来るか?」
そう聞いてきた。
それは真っ当な疑問だ。
ということでこの質問に対しては事前に回答を用意していた。
秀明「これらの金塊は爺さんが俺の会社の敷地に埋めていた埋蔵金だ。
含水爆薬の保存用の防爆倉庫を潰そうとして中を片付けていたら中から出てきたんだ。
どれだけあるかまだハッキリしないが、今分かっているだけで軽く100kg近くある」
もちろん嘘だが、爺さんは川北財閥の創設者をしていた位なので、あり得ない話ではない。
実際、秀明の親父は爺さんの最後の息子で爺さんは秀明の鉱山で亡くなったのだ。
そんな彼が溺愛していた末っ子の鉱山に隠し財産を遺していたとしても全く不思議ではない。
実際彼の遺した会社の多くは日本を代表する企業ばかりなのだから。
ここでハッと秀明は考えついた。
この金塊はもしかして本当に秀明の爺さんからの贈り物だったんじゃないのか?と。
もちろん秀明が産まれる前に亡くなった人の話なので非科学的なことは間違いないのだが、そう考えてみたら何となく辻褄があう。
爺さんは俺たちに時空を超えて金塊を贈ってくれた、だがその金塊で異世界を救ってくれ、そう爺さんから言われているような気がするのだった。
もちろんコレはただの思いつきだし、妄想に過ぎないのだが、なんとなく確信に近いものを感じる秀明だった。
道弘「秀明の所はろう石を掘っていて、近年、経営が困難になっていたことは知っていた。
だが、親父はこんな感じで最後の最後で手を貸してくれたんやなぁ。
ホンマ、つくづく凄い男だったんだな」
そう言ってハンカチで目を押さえる道弘であった。
その日の晩は久々に秀明と道弘は街に繰り出し、屋台のハシゴをして飲み歩いた。
道弘「おう、任せとけ!親父の遺した金は俺が責任を持って換金するぞ!
金を扱ってる工場はここにはないから、明日にでもそこの工場長に話を通しておくわ!
ワッハッハ!!儲け話は楽しいな!」
相変わらずの大声でガハハと笑う道弘であった。
翌日、道弘に教えてもらい、秀明は初めて爺さんの銅像が立つ公園を訪れた。
「なんや、死んだ親父にそっくりやないか」
初めて見るその銅像の笑顔は、死んだ秀明の親父さんの顔にそっくりであった。
いかがでしたか?
秀明の物語を書いてみました。
「異世界と日本を繋げたのはもしかして偉大な爺さんだったのか?」
この答えは分かりませんが、秀明にとって異世界を救う事業は彼にとって人生のあらたな目標となりました。
彼と息子たちの話はここから益々加速していきます。
次回をお楽しみに!
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