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神の国からの使者と超限戦(無制限戦争)

リンツ「対等、対等とおっしゃるか?


対等というのは、双方、同じくらいの力がないと出来ない関係ではないのか?」


雅彦「私どもの国にはこのような言葉があります。


『実るほど(こうべ)を垂れる稲穂(いなほ)かな』


意味は、人や組織や国は、偉くなればなるほど、より強大な力を持てば持つほど相手に対して謙虚な気持ちで丁寧に接することが大事ということです。


私はこの言葉が好きですね。


これは何も目標にしている言葉というだけでなく、実際に私どもの国の元首はこのことを実践して、体現しています。


だから私みたいな一国民もその姿勢に(なら)いたいと考えているのです」



リンツ卿は、ふ〜っと大きく息をひとつついて話を続けた。


リンツ「マサヒコ殿、貴公は私どもの常識を遥か彼方に超えて存在するお人のようだ。


本当にどこから来られているのですか?


この世界(ミッテレルネ)にニホンという国があるということは寡聞(かぶん)にして聞いたことがありません。


『神の国』と言われてましたが、本当の事をお聞かせ願えるか?」


雅彦「この世界は、ミッテレルネと呼ばれていますが、我々は全く違う世界から来ました。


あちら側では『地球』と呼ばれています。


現在、その地球には数百の国が存在していて、60億人がいます。


我々が住んでいる日本という国はその中の一つで、一億二千万人が住んでいます。


馬鹿な事を言うと思われるかもしれませんが、その『日本』と『スピスカ=ノヴァ』が繋がったので、私どもはこちらの世界とあちらを行き来することが出来るのです」


リンツ「では、マサヒコ殿は帰ろうと思えばニホンに帰ることが出来るのですか?」


雅彦「はい、昨日もあちらに戻ってましたよ」


リンツ「そんなにカンタンに行き来することが出来るとは…。


いつかはその世界も見てみたいものですね」


雅彦「それならば、そのタブレットの中に日本やその他の国の様子をカンタンにまとめた動画がありますのでご覧になられますか?」


リンツ「おぉ、よろしいのか!ぜひ、お願いします!」


比呂はタブレットを受け取り、日本の魅力をまとめた海外の旅行者向けのプレゼン用のビデオを再生した。


タブレットの画面に釘付けになるリンツ卿とウルリッヒ。


タブレットには、富士山や京都の古い寺院や町屋、芸者さんや新幹線、東京の街並み、渋谷の繁華街の様子、大阪の食い倒れ、姫路城、港と新鮮な魚介類、日本刀とそれを鍛える刀匠、沖縄の綺麗な青い海と砂浜、北海道の一面の花畑、空から見下ろした日本列島などが次々と映し出された。


しばらく呆然と見つめていたリンツ卿は、おもむろに声をあげた。


リンツ「このような国が、スピスカ=ノヴァと繋がったというのですか?」


雅彦「そうですね。


先程、映し出された場所は村と繋がっている所と少し離れてますけど、まぁ同じ国の中に実際にありますよ」



しばらくの沈黙の後、ウルリッヒ内政担当官が初めて発言した。


ウルリッヒ「リンツ卿、これはぜひ『対等関係の同盟』を結ばねばなりませんな。


我が領土はマサヒコ様とニホンコクとの交易でミッテレルネ随一の豊かな領地になる最大のチャンスと言えます。


マサヒコ様、対等な関係をお望みとのことですが、我らが領地から提供出来る物は何を考えておられますかな?」


雅彦「我々は『鉱物資源』を特に望んでおります。


ご覧いただいたように日本にはあらゆる物があります。


ですが無い物もあるのです。


例えば、『金』や『銀』や『石炭』などの鉱物資源は日本では埋蔵されていません。


我々の国は高い工業生産力を持っていますが、残念ながら原材料の大半は海外からの輸入に頼っているのが現状です。


次に『土地』、これも足りません。


日本は先程の動画でお見せしたように多くの人が住んでいますが、人が住める土地や農作物を植える農地は圧倒的に足りません。


見た処、グリステン領には手付かずの広大な草原があります。


あの土地を大規模に開拓して、麦やとうもろこし、大豆、じゃがいもなどを植えるとグリステン領は一大生産地となるポテンシャルがあると考えています。


こちらで農作物を大量に生産出来るようになれば、日本はそれらの食材をより確実なルートで得ることが可能となります」



リンツ「確かに我が領内には金や銀、石炭などは比較的豊富に産出しますし、広大な土地はあります。


今まではそれら鉱物資源を他の領地に輸出して食料品を得るというのが代々続いていました。


実は、私どももそれではダメだろうということで、近年は農民に対して税を減免し、更に新たに開拓した農地は納税を10年間、免除すると発布しました。


ですが、この政策に対して異議を唱える者も多くおりました。


代表格は、ドラゴニアなど他国や他の領地との交易で儲けている商人や、我が領内の商人ですがドラゴニアや他の領内などで手広く商売を行なっている者たちです。


この者たちは、ドラゴニアとの交易で利益を得ている、もしくはドラゴニア国内で利益を得ているため、我が領民であるにも関わらずドラゴニア側の手先のようになって動いている者も多くいるのです」



なるほど、ポプラト、グランパキーなどがドラゴニア軍に侵略されていたにも関わらず、まともに反撃出来なかった理由はそれか。


領内で農業の振興策をしようとしていた領主の足を引っ張っていたのは他ならぬ領民であり、彼らは色んな方法でドラゴニアから利益を得ているのだろうと思われるのだ。


雅彦「では、我らの共通の敵はハッキリしましたな。


まず『ドラゴニアの侵略軍』。


そして『グリステン領内の無国籍企業』ですね」


リンツ「その『無国籍企業』というのはどういうものなのですか?」


雅彦「多くの国や領地を股越して利益を追求している商人のことです。


私どもの国にも多くいます。


それらの特徴は『利益の為には平気で国や領民を売ることを(いと)わないこと』なんです」


リンツ「貴公の国にも、そのような存在はいるのですね。


私どももそれら商人の力を抑えるためにずいぶん前から手を尽くしているのが現状なのです」


雅彦「だが、苦戦が続いている、そういうことなのですね?」


リンツ「お恥ずかしい話ですが、ご指摘の通りです」


雅彦「それでしたら、こちらの者がそのような事案に対しては専門家ですので、対案を出させたいと思います」


比呂「グリステン卿、私はマサヒコの弟であり、参謀をしている比呂 源 と申します。「ヒロ」とお呼び下さい。


ドラゴニアが仕掛けているのは『超限戦』と呼ばれているものです」


レンツ「『チョウゼンセン』、ですか?」


比呂「はい、超限戦とは通常戦、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、法律戦、心理戦、メディア戦などありとあらゆる手段を使い、相手の国を侵略する戦法のことをいいます。


私どもの言葉では『Unrestricted Warfare』、こちらの言葉にすると『uneigeschränkt kreig』という処でしょうか。


『無制限戦争』という意味になりますね」



リンツ「…つまり、ドラゴニアは普通に攻めてくるだけではなく、我らの領地を以前から内側から侵食していたということなのですね?


あれだけ巨大な国であるにも関わらず、卑怯な手を使い戦いを仕掛けていたということなのですね?」



比呂「はい、その通りです。


このような行為は我々の世界でも既に『宣戦布告している行為』だとみなされる行動ということになります。


つまり、敵側からしてみれば既に戦争を本気でふっかけているという意思の元で行動をしているということです」



リンツとウルリッヒはその言葉を聞いて、血の気が引いたような青白い顔色になっていた。


彼らのような主戦派と呼ばれている面々でさえ、ドラゴニアと本格的な戦争になるということをどこかで避けようとしていたのだ。


だから、比呂から「戦争はすでに始まっていた」「しかも敵は手段を選ばすありとあらゆる手を使ってきている」という事実を指摘され、改めて自分たちの置かれていた立場が危ういものなのだと痛感したのだ。



リンツ「マサヒコ殿、ヒロ殿、恥をしのんでお聞きします。


この劣勢を挽回する方法はまだ残されているのでしょうか?」


雅彦は思った。


リンツ卿という若い領主は、この一点を見ても非常に優秀だな、と。


状況判断の速さ、間違いがあったことを素直に認めることが出来る度量の大きさは賞賛に値する。



雅彦「ヒロ、今日中に対策をまとめてリンツ卿に提出せよ。


リンツ卿、貴公は非常に善良でまた優秀な領主のようだ。


貴公が望まれるのであれば、このグリステン領をドラゴニアの手から守り、そしてミッテレルネで最も豊かな土地にしてみせようではありませんか。


我々が協力すれば必ず成し遂げることが出来ます」


雅彦は席を立ち、そう宣言するのであった。

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