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紅い瞳の少女

広場の中央に組まれた丸太に火が付き、炎が立ち上り始めた頃、事件が起こった。


門の付近から女性と思われる声がしたと思ったら突然、秀明のランクル70に「カーン!」と一本の矢が当たったのだ。


広場は騒然となった。


雅彦は比呂に「隠れろ!」と指示を出し、自らも自分のランクルの陰に飛び込んだ。


慌てて転がるように兄貴の後を追う比呂。


親父の秀明は自分のランクルの助手席のドアを開け、中からベネリM3ショットガンを取り出し、チャンバーに弾を詰めて装填した。


そしてショットガンの狙いを門の方向に向けた。


門には三名ほどの人が立っていたが、そのうちの一人が足早に秀明の方に駆け寄りながら、弓矢の狙いを秀明に向けた。


双方、互いを狙う状況になり、「しまった、親父のライフルをこちらに載せておけば良かった」と後悔する雅彦。


とりあえず荷台にあるバールを構えた。


比呂は腰の後ろから、先日親父から貰ったガーバーのMKⅡを抜き放ち、いつでもその射手に飛びかかれる体勢を取った。


矢を放ったであろうその射手は、何やら言葉を放ちながら秀明を睨みつけていたが、フードの奥に見える顔は、端正な顔つきで、前髪で左眼が隠れていたが右眼は焔の光を反射して真っ赤に見えた。


ここで村長のエマが二人の間に割り込み、エマはその射手に対して何かを話し続けた。


弓を下ろしたのを見た秀明は、もう大丈夫だろうということでチャンバーから弾を抜き出し、スリングのホルダーに弾を戻した。


二人はしばらく話し合っていたが、その女性はフードを脱いで秀明に対して頭を下げたのだった。


それを見た秀明も、身振りで気にしないでいいと伝えて、この場は収めることになった。


ふと自分の車を見たら、センターピラーに矢が刺さっていたが、矢じりは鉄板を貫通しかけていた。


おそらく50mほどは離れた距離で矢を放ったのであろうが、とてつもない威力の弓を使っているんだなと、変に感心する秀明だった。


安全そうに見えてもやはりここは「異世界」、日本みたいな安全ではないんだなと改めて思う日本人たちだった。


到着した三名はどうやら狩人(イェーガー)らしく、ぴっちりとしたレザーの服に皮の胸当て、左手には小手を付け、外套を装着していた。


全身は茶系統の色に統一され、森で目立たないような服装となっていた。


そして手には反りが強い弓が握られ、背中には大き目な矢筒が背負われていた。


後ろの二人は他の村の女性と同じく巨乳だったのだが、先程射掛けてきた目の赤い女性はここでは珍しく胸の大きさは標準サイズに見えた。


やや小柄なのだがスタイルは抜群で、フードを脱ぐと明るいボブカットの金髪と尖ったアゴの形が特徴の美女であった。


いわゆる片目キャラである。


どうやら我々が村人を襲っていたと勘違いしたようだったのだが、矢が当たらなくて本当に良かった。


というより、警告の意味でわざと人間に当てなかったのだろう、じゃないと狩人など出来る訳ないし。


誤解も解けたようだし、何か食べるものでも…とランクルの荷台を漁った雅彦はちょうど三つ、カップヌードルが残っていたのを見つけて、彼女たちに食べさせることにした。


湯を沸かしている間、親父は何やらスマホを使って村長のエマと狩人の子たちと話をしているようにだった。


雅彦が作業をしてたら、守衛をしていたロングヘアーのツンデレ系の子が近寄ってきて「ヴィルマ」と話しかけてきた。


雅彦がキョトンとしていたので彼女は少し怒ったような感じでさらに「マイナーメ イスト ヴィルマ」と言った。


ああ、自己紹介かということで、彼も「マイナーメ イスト マサヒコ」と名乗るのだった。


もう!という感じですこしふてくされた表情をする彼女。


こんな時に言葉が通じたらなぁと思いながら作業の続きをしようとしたら、その様子をはるか彼方から目ざとく見つけたもう一人の守衛の子が凄い勢いで飛んできた。


雅彦の目前で急ブレーキをかけて停止したと思ったら「イングリット!」と名乗るのだった。


呆気にとられながらも同じように自己紹介する雅彦。


ほう、最初に会った村人一号がヴィルマで、二号がイングリットというのか。


うーん、なんかこれはモテ期が来てるんですかいな?などと思いながら、彼女たちにも手伝ってもらってカップ麺の準備をした。


手伝うというよりは、彼女たちに作る手順を説明するような感じだったが、彼女たちからしてみるとカップ麺は当然見たこともないので雅彦の様子を食い入るように見つめていた。


ケトルを取り出して水を入れようとしたらヴィルマが先回りしてタンクの弁を開けてくれた。


へぇ、さっきの作業を見ていただけでここから水が出るということが理解出来てたのと気が利くことに感心した雅彦だった。


湯も沸騰し、カップ麺に湯を注ぐと三人はカップ麺とフォークを持ち、先程到着した狩人三人のところにそれらを持っていき、食べるように勧めた。


最初は怪訝な表情を見せていた彼女たちだったが、ヴィルマに勧められて、カップ麺を受け取った。


食べ方が当然分からないので蓋の開け方を雅彦が教えてあげて、フォークで麺をすくって食べろと身振り手振りで彼女たちに伝えた。


恐る恐る麺をすくって口に入れる三人、するとみるみる表情が明るくなり、はふはふ言いながらあっという間に完食した。


言葉は分からないが「えっ?何これ?美味しいんですけど!!」みたいな会話をしているのは何となく伝わってきたのだった。


ひと騒動あったが、なんとか落ち着き、キャンプファイヤーを囲んだ村人たちは歌い始めた。


その曲を聴いた秀明は「ん?なんか聞いたことあるぞ?」と聞き耳を立てていたら、横に立っていたエマが「エリカ」と教えてくれた。


ああ、有名なドイツ民謡だなと思ったが、なんか違和感があった。


あれ?この曲って割と新しかったんじゃなかったっけ?と。


少なくとも中世の曲ではない、もっと近世の曲のハズだ。


ということは、少なくとも割と最近までドイツとこの世界は繋がっていたということなのだろうか。


益々謎が深まるのだが、今はまだ分からなくてもいい、この楽しいひと時を過ごすことの方が大切だろうと思うのだった。


秀明はスマホをエマに見せて、言葉の入力の方法を彼女に教えた。


横で先程彼に矢を放った狩人たちもその様子を見ていたが、タッチパネルとキー入力の方法をあっという間にマスターしてしまった。


ワイワイとはしゃぐ彼女たち。


早速、何か打ち込んでいたと思ったらエマはスマホの画面を秀明に見せてきた。


そこには「あなたは神の世界から来たのですか?」と日本語で書かれていた。



村人たちとの交流も進み、また新たな登場人物の「紅い瞳の少女」が現れました。


ここから雅彦達はこの世界の真実を少しずつ知ることになります。


では次回もお楽しみに!


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