PROJECT MITTELERNE(プロジェクト ミッテレルネ)
鉱山の持ち主で主人公、源 雅彦の父親でもある小畑 秀明の実の弟である小畑 秀二は建築業の会社を経営している。
秀明は異世界の開発の必要性が高いこともあり、秀二を仲間に引き込んでいた。
「とりあえず何から手を付けるか」で随分揉めたのだが、結局は秀明の要望通り、異世界側の日本人の拠点となっている村の隣にある丘から村へ舗装路を敷くことになった。
秀二側も情報セキュリティの関係で全ての社員をこちらの世界に呼び寄せることは出来なかったため、信頼出来る男をまず一人、異世界に派遣することにしたのだ。
小畑 貴史23歳、父親である秀二の会社に勤め、建築業関係全般の仕事をやっている男だ。
彼は高校卒業と同時に親父の会社に入り働き始めたので、歳の割には色々な技術を身につけている方だった。
彼が「異世界」についての話を聞かされたのは、とあるビルの内装工事を担当していた時であった。
いつものように同僚と仕事をしていると父親である秀二から電話があった。
秀二「突然で悪いが、明日から別の現場を担当してもらうことになった。
現場はお前もよく知っているだろう、秀明伯父さんの鉱山だ。
小さい頃、よく行ったことがあるだろう?」
貴史「伯父さん?ちょい前に葬式で会ったよな。
伯父さんの山での工事ってなんだ?」
秀二「かなり大口の契約になりそうなんだが、予め言っておかねばならないことがある。
このプロジェクトは軍事機密に関わっている事なので、あちらでの話は一切、外部の人に漏らすことは禁じられている。
この話は、母親や友人、会社の同僚にも一切秘密にしないといけないが、まずこれを守れるか?」
貴史「軍事機密?秘密厳守?!なんかとんでもないプロジェクトが進行してるってことなんか?
オッケー、分かった。
秘密は必ず守るよ。
ちなみに秘密を外部に漏洩したらどうなるんだ?」
秀二「会社が倒産するくらいの賠償金の支払いと、今後、二度と建築業界での仕事が出来なくなるくらいの軽いペナルティだな。
なんせ川北グループを敵に回す訳だから、そこはマジで舐めないほうがいいぞ」
まぁ、ちょっと大袈裟だが、当たらずとも遠からずって感じだろうか。
なんせ、「プロジェクト ミッテレルネ」と名付けられた異世界進出事業は、雅彦と秀明の川北産業だけでなく、川北マテリアル、川北電機などという大企業が本格的に支援や進出を始めている一大プロジェクトになりつつあったからだ。
関わり始めている各社にとっても得る利益やメリットの多いこのプロジェクトを個人的な都合で安易に他にバラされたりでもしたら、そりゃどんな報復があるかわかったもんじゃないからだ。
軍事機密といったのもあながち嘘ではない。
実際に、川北電機などは軍用のドローンの開発と実験場をミッテレルネに用意するつもりだし、金の相場を自由に操れる手札を持ち始めた川北マテリアルのビジネスチャンスを潰したら、いくら身内だといってもどんな報復を受けるか想像も出来ない。
ひとまずは、厳しすぎるくらい厳密に機密保持について刷り込んでおけば良いだろうと思う。
とりあえず、その日の仕事が終わり会社に戻ると秀二が「機密保持に関する誓約書」を用意して待ち構えていた。
これは秀明が予め原案を用意していた書類で、今後、異世界に呼ぶ日本人に対して、必ず書いてもらう予定にしていた。
誓約書の内容は、
「川北産業の敷地内で起こる全ての出来事や情報を他の者やインターネットなどに漏らすことを一切禁じる」
「このプロジェクトへの参加を終了した後も機密保持の契約は永遠に維持される」
おおざっぱにいうとこのような事が書かれていたのだった。
秀二「難しいことを書いてるが、要は情報を家族にも友人にも他人にも一切漏らすな、漏らすと大変な目に遭わせるぞっていうことだけだ。
だが、この事業は単体でうちの一年の年商を上回る規模のビジネスとなりそうなので、俺は息子であるお前にこのプロジェクトを担当してもらおうと思い、お前を推薦した。
予め言っておくが、あちらの仕事は想像を絶する苦難が待ち構えているかもしれない。
だが、お前ももう23歳だ。
責任のある仕事を任されてもおかしくない歳だろう。
ここで一発、男を上げてこい!」
貴史は親父である秀二の話を聞いて、正直なところ「わー、面倒なことになったなー」と思っていた。
伯父である秀明の会社がある鉱山というのは、貴史が住んでいる場所からしてみるとかなりの田舎で、遊ぶ処など何もない場所だったからだ。
同じ年代の雅彦(25歳)の場合は、「四駆バカ」なんで田舎の方が遊ぶ場所が多いから田舎は苦にならなかったし、
比呂(20歳)はオタク気質でどちらかというとひきこもり体質なんで、ネットさえ繋がればどこでも生きていける体質なんでこれまた田舎は苦にならない体質だった。
翌日、秀明の鉱山に向かいながら、クルマの中で「はー…、軍事機密だとか面倒だよなー、ダルいわ…。
早く終わらせて連れと遊びに行きたいわ…」
鉱山に着くと、入り口のあたりから白っぽい路面の未舗装路になり、しばらく進むと右側に工事中と思われる現場が現れてきた。
そちらは既に別の業者が多数、仕事に取り掛かっていて、外から見るとほぼ完成しているように見えた。
貴史「ん?これのことかな?これが軍事機密に関わる工事とかになるとは思えないんだけどな??
なんかの秘密の研究所か何かかな?」
よく分からないからそのまま走り、秀明が待つ事務所に向かった。
貴史は小さい頃、この鉱山で雅彦や比呂とよく遊んでいたもんだった。
当時はまだ活気のある山で、ダンプやブルドーザー などが大量に行き交い、発破をかける魂を震わせるような爆音などよく聞かされたもんだった。
この山ではよく松茸を取ったり、栽培していたシイタケを取ったり、竹林に入りタケノコを掘ったり、ゼンマイとかの山菜を採ったりいろいろして遊んだ。
貴史「そーいえば、雅彦や比呂とも久しく遊んでないな、アイツら元気してんのかな?」
歳が比較的近いこともあり、彼ら三人は昔はよく遊んでいたのだが、貴史は剣道で忙しくなったこともあり、中学生以降はすっかりご無沙汰状態なのであった。
鉱山内の道を抜けると開けた土地に出て、左手には山を広範囲に切り崩した場所や、掘り出した鉱石を一時的に貯蔵しておく屋根付きの倉庫、事務所などが見えてきた。
貴史は事務所の前にクルマを停めて中に入ると、タイガーパターンのジャケットを羽織り、下はジーパンというラフなスタイルの秀明が待っていた。
秀明「おー、貴史か、久しぶりだな!元気してたか?」
貴史「お疲れ様っス、見ての通り元気ッス。
この山も久しぶりに来ましたよ。
子供の時以来ッスね」
秀明「コーヒーでいいか?」
貴史「はい、いただきます!」
しばらく昔話や、仕事の様子など世間話で盛り上がった処で秀明は今回のプロジェクトについて切り出した。
秀明「秀二からある程度は聞いていると思うが、これから貴史に担当してもらおうと思う仕事は、日本の将来を左右しかねないほど重要なプロジェクトの建築部門のリーダーだ。
これから大規模な開発を行う予定があり、予算は小国程度なら一国の国家予算規模だと思ってくれればいい」
貴史「え?プロジェクトのリーダー??
国家予算規模!?」
秀明「ああ、突飛な話に聞こえるかもしれないが、だからこそ、このプロジェクトは強力な情報統制が掛かっている。
ちなみにこのプロジェクトの全体のリーダーはうちの雅彦だ」
しばらく呆気にとられていた貴史であったが、聞き覚えのある名前に反応した。
貴史「雅彦って、あの雅彦?!
確か大型トラックに乗ってると言ってた気がするけど、アイツがそんな巨大プロジェクトのリーダーやってるってこと?」
秀明「あぁ、比呂はその補佐だな。
ちなみに俺は顧問って処かな?
現時点ではちょうど100名ほどのメンバーがいる。
タカシを彼らに紹介したいから、ちょっと来てもらえるか?」
貴史「これから行くの?てっきりこの鉱山で工事をするもんかと思っていたけど、違うの?」
秀明「はは、当たらずとも遠からずってところかな。
歩いて10分ほどの距離なんでついて来てくれ」
秀明は貴史の前を歩いて事務所を出て、そのまま建物の裏側に歩いていった。
そこには幅が5メートルのほどの林道の入り口があり、数メートル入った先には道の両端にパイロンが設置されていた。
秀明「ここから先に進んでみてくれ」
貴史は言われるままに歩を進め、パイロンの間を抜けたら、いきなり空気がまったく違う場所に飛ばされていた。
彼の正面には夕陽が見えていて、左手には広大な森、正面には遥か彼方まで続く地平線があり、日本ではありえない光景が広がっていた。
ふと気がつくと隣に秀明が立っていて、声を掛けてきた。
秀明「ようこそ異世界へ」
そう言いながら秀明はスタスタと丘を降って行くのだった。
しばらく呆然と辺りを見回す貴史。
真後ろを振り返るが、山頂に雪をたたえた山が横に広がり、自分が立っている丘の上には何やら遺跡があったり、トレーラーハウスがあちこちに点在していた。
ハッと我に返った貴史は、慌てて秀明の後を追った。
丘を少し下ると右下に周囲を壁で囲まれた村が見えてきた。
その街並みは中世のヨーロッパを連想させられるもので、意外なことに近代的な設備、例えば電線や街灯などが全く見当たらなかった。
村の横に広がる広場には多数のテントと兵隊?と思われる人たちが訓練みたいなことをしており、剣や盾などを持って戦っていたり、弓矢の訓練などを行なっていた。
貴史「伯父さん、ここは何だ?異世界転移ってヤツなのか?」
秀明「あぁ、何と言うかしらないが、ここは異世界だ。
オレらは自由にこちらの世界と彼方の世界を行ったり来たり出来るみたいだな」
貴史はそこそこ人並みにアニメや漫画など普段から見ているので、この手の話はすんなり理解できた。
異世界召喚ではない、召喚されてないから。
厳密に言うと異世界転移でもない、転移は一方通行というイメージだがこれは自由に往復できるからだ。
言ってみれば、「GATE」などの異世界交流系って感じだろうか?
日本から持ち込んだ武器とか商品で無双したりする系の、「日本食うまうまー!」とか言っちゃう系のヤツだ。
秀明「そろそろ雅彦たちも村に帰ってくるから、その時にでもタカシを皆に紹介するぞ。
カンタンに言うと、ここは現地語でミッテレルネと呼ばれている世界だ。
残念ながら魔法とかは存在しないみたいだ。
だが、ドラゴンみたいな巨大なモンスターはいるそうだぞ、まだ見たことないがな。
この村は現在、隣国から攻められていて、先日もその国と戦って撃退したばかりだ。
雅彦は元々は敵だった傭兵部隊を率いて戦っている。
比呂は戦略立案と参謀みたいなポジション、俺は兵站の担当さ。
この村は基本的に女性しかいない村でドイツ語が使われている。
オマエもモテたいならドイツ語を学んだ方がいいぞ」
ワハハと笑う秀明を見ながら丘を下っていくと、村の門があり、そこも潜ると村の中に入った。
近くで見る村の建物はどこぞの観光地で見るような洗練された建物ではなく、手作り感満載の素朴な雰囲気のある魅力的な建物が並んでいた。
建物は二階建ての物が多く、秀明に連れられて来たのはその中でも飛び抜けて大きな建物であった。
正面の扉をくぐると大きなホールとなっており、明らかに教会だとわかる造りとなっていて、秀明はその奥にある部屋に入っていった。
部屋の中に入るとそこだけ電気の照明が付けられており、日本から持ち込んだであろうモニターやパソコン、机やホワイトボードなどが並んでいた。
部屋の中央に置かれていた大きな机の向こうに金髪の女性が二人座っていて、二人ともビックリするほど美人であった。
そしてそこには比呂もいて、彼女たちと何かを話し合っている様子だった。
比呂は部屋に入ってきた秀明と貴史を見つけ、「お!ター君じゃん!久しぶり!」と声をかけるのであった。
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