ふたカラ
防音の効いた一室。
私は、あらんかぎりの声をあげていた。
横で七菜さんがいる。
私は、絶叫する。
「こな~ゆき~♪」
七菜さんが、シャンシャンとタンバリンをふる。
絶叫というか、絶唱だった。
いや、死なないけど。
「聲の年代で、その歌を歌えるのは世代的にどうなんだ?やっぱり小学生のふりした、ロリータな成人女性......」
「ちーがーいーまーす。勉強家なだけですー。変なもーそーしないで下さいー」
七菜さんが、私がもし成人女性なら、という妄想を、体の糖分をすべて頭に回して、ブツブツと考え出したので、マイクを渡す。
「お、おう。すまない」
現実に帰ってきた七菜さんが、歌い出す。
私も次に歌う曲を検索しながら、聞き入る。
私は、音楽が好きかというと、音楽があってよかったと思える。
一人ぼっちを認識した時に、歌ってよくまぎらわしたものだ。
景気よく、自分に渇を入れるため。
人に聞かせる歌じゃなかった。
自分を奮い立たせるための歌だった。
それでよかった。
「ほ~らあなたにとって♪大事な人ほどすぐそばにいるの」
「ほ~らあなたにとって♪大事な人ほどすぐそばにいるの」
それでよかったんだけど、七菜さんの歌に乗り込んでデゥェットした。
この曲は歌いたかったのだ。
一緒に歌うのも悪くない。
「響け恋の歌♪」
「響け恋の歌♪」
歌いきって、ひと息つく。
今日は七菜さんと、カラオケに来ていた。
私は、何気に初カラだった。
七菜さんは友達と何回か来ていて、慣れた感じで誘ってくれた。
音楽は七菜さん、ラジオで洋楽をかけているけど、聞き流しで、自分で歌えるレベルではないそうだ。
コスパ悪いな。
オーダーしたお菓子を、店員さんが運んできた。
私は、ガリガリ君で七菜さんは、ハーゲンダッツだった。
なぜ氷菓。
「.......七菜さん、それは高いヤツでしょ?もっとジャンクにいかないと。そんなの食べたら、腑抜けになりますよ?」
「聲はまだ食べた事ないの?......そう。じゃあひと口食べてみなさい。世界が変わるわよ」
七菜さんは、ひと口ハーゲンダッツを口にして、私の顔に近付く。
「な、に、を!」
むぐう。
口の中に、濃厚なバニラとチョコチップの味が、広がって。
それにちょっとだけ、七菜さんの味。
それらが私の口に流し込まれて。
笑顔で七菜さんは、
「腑抜けになっちゃうのは当たってるわね♪」
「ほんとにね」
これ食べた後に、ガリガリ君食べる気がしないなー。
堕落!
ってか、チュッチュッしてる私達。
「.......こないだから、ちょっとやり過ぎじゃないですかね?」
「でも、カラオケ店だし。せっかくの機会だし」
──外でも、盛り上がったら貴女するでしょうに
口はふさがっているので、心のなかで突っ込んだ私だった。
続く




