家路
「次は──駅、──駅。お降りの際には、忘れ物ないようにお願いします。間も無く到着します」
カタン
コトン
キィー!
「ハッ!!」
よだれをたらしながら、バチっ!と目が覚める私。
隣で七菜さんも、よだれを垂らして私の頭にほおずりしている。
ちょっ!
髪!!
「七菜さん!降りますよ!急いで!」
プルルルルッ
プシュー
ドアが閉まる電車。
どうにか、下車するのに成功したようだ。
ふぅ......間に合った。
私は、口のよだれをふきつつ、髪の毛についたよだれも拭きつつ、七菜さんのよだれも拭いてあげる。
「行きに続いて、帰りまで寝ぼうするなんて」
「いや、そりゃあ夜にあんだけ起きてたら、昼寝るでしょ。2日で睡眠時間、6時間ぐらいじゃない?」
「七菜さんが寝かしてくれなかったからですー」
「聲が可愛いすぎるからですー」
イーと、舌を出す乙女たち。
端から見て、恥ずかしいぐらいバカップルだった。
尊い.......。
すれ違いの、着流しのお兄さんが、あら~してた。
案外、七菜さんとこうしてイチャついてる時は、人目気にならないんだよね。
それだけ、視野がこう!
狭くなって.......
2人だけの世界入っちゃってる!?
目と目が合う。
もう七菜さんも、目はそらさない。
互いが互いしか見えなくなる。
「現地解散だったね.......。んじゃ、お別れのキスでもしますか」
「人目は気にしないけど、やっぱり......ん!」
駅のプラットホームで、電車が過ぎる。
その影に隠れて唇を奪われた。
風で髪の毛が乱れる。
これから先、何回唇を奪われるのだろう?
捧げて、奪い返そう......。
背筋を伸ばし、浮いたかかとを戻す。
少しかがんだ七菜さんも、背中を戻す。
2人で笑い合うけど、なんだか寂しい。
「寂しいな......」
「家に着いたらライン送りますね」
旅行の後の、あー家に帰ってきたー!という感覚よりも、名残惜しい感じだった。
腰に回していた手を離し、お互いの指で絡み合い、さよならという。
明日、直ぐに会えるのは分かっているけれど、それでも寂しかった。
「七菜さんまた明日!」
「うん。聲も気をつけて帰って」
夏休みも、もう終わりだ。
続く




