宿泊
ひまわりの丘の展望を眺めた私達は、ビジネスホテルに戻ってきた。
夕日に照らされたけども、北国だけあって真夏でも涼しい、ちょうどいい気温だった。
「先にお風呂で汗流そうか。ご飯は、その後にしよう」
一旦、部屋に戻り浴衣に着替える私達。
階下の露天風呂へ向かう。
脱衣場に入り、浴衣を脱いで体に、バスタオルを巻こうとする。
シュル
隣から、浴衣が肌をすれる音がする。
耳がその音だけを拾った。
私は隣を見れない。
横を見ないように固まっていた。
「?どしたの、聲。早く入ろうよ。また、背中の流しっこしようよ」
「........は、はい」
バスタオルで軽く前を隠しているけど、七菜さんの
はだけた部分の肌色が目についてしまう。
「うっひゃー♪風が冷たーい。前のスパの時の露天より、寒暖の差が気持ちいい!」
「そ、そうですね」
そそくさと、お湯に浸かろうとした私の手首を、七菜さんがガシッ!とつかむ。
「どーしたの聲。体を洗ってから入る基本を忘れるなんて?さっ、ちゃっちゃっと洗いましょ」
桶に座り、タオルにボディーソープを泡立てて、背中を流される。
まだマシか。
後ろを向いているから、七菜さんの裸を直視しないですむ。
「さっシャワーで背中流して♪次は頭洗ってあげる。銭湯の時は洗えなかったからねー。リベンジ♪リベンジ♪」
「えっ!?」
シャンプーが泡立っていく。
七菜さんの細い指が、私の頭を刺激して。
七菜さんの四肢は、見えてない。
見えてないけれど、指が私に触れている。
その事実が、今の私を刺激した。
今まで感じなかった、刺激が。
き........気持ちいい。
頬が緩み、緊張で固まっていた体の力が抜けてしまう。
「ふにぁ~」
「アッハッハッ!ご満悦だな、聲。マッサージ師にでもなろうかな?さっ、流して湯に浸かろう」
さすが北国だな。
街で見た夜空より、星が瞬いて見える。
隣で、元気に露天風呂を堪能している、七菜さんの肩に頭を預けている、私。
緊張からの緩和で、意識がリラックスしすぎて、何も浮かばない。
ただ、七菜さんの話しに相づちを打つだけだった。
晩御飯も、海鮮丼だったけど、余り憶えていない。
イクラに、サーモン、甘エビに、サザエ。
おいしーね♪聲!
七菜さんが、美味しそうに食べていたのは、憶えている。
部屋に戻る。
明日も、観て回るのだろう。
旅の疲れもあって、早く眠るのだろう。
ダブルベッドで、寝っ転がる七菜さんは。
人間抱き枕させてー聲♪
と、平常運転だ。
私は無言で、ベッドに乗り込む。
「七菜さん」
七菜さんは、私の様子を察知して、少し身構えた。
寝ていた姿勢を、座る形に戻して。
「聲?」
続く




