表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/95

味噌ラーメン




駅から徒歩10分程歩いて、ビジネスホテルに到着した。

フロントでサインをして、鍵をもらう。

人懐っこい笑顔をした受付嬢をあとにして、エレベーターに乗って3階で降りる。

角から2つ目の部屋で、カチリと鍵を外す。


ペア招待券だけあって、もちろん相部屋だった。

私はその事実に、少し緊張する。

いつもなら、いつも通り流すんだけど、私はこの旅行で、心に決めた事があった。



「どーしたー聲?うつむいちゃって。てか、ツインベッドだよ聲!どーしろって?うはははっ!露天風呂もあるんだって楽しみだなあ!」



「.......ほ、ほんとに」



うつむいたままの私に、ん?といぶかしむ七菜さんだったけど、思い起こしたのか、テンション上がったまま、もう一つギアが上がった。




「ラーメンだよ聲!晩御飯はここで出るけど、お昼は出ない。北の大地の味噌ラーメン!堪能しない手は無い!」



「子供のような、私より子供らしいテンションですね」



七菜さんのテンションが上がったおかげで、私の決心は悟られなかった。

まだ。

1番いいところで伝えたい。


ホテルを出て、駅の周辺を歩く。

グーグルマップを見る七菜さんの表情は、真剣そのものだった。

ああそうか。

ラーメンアニメに救われたんだった、七菜さん。

そりゃ力も入るか。

果たして、到着。

観光地から少し外れた路地に、お店はあった。

私達は赤いノレンをくぐり、券売機で券を買う。



「へ~、券買うラーメンって初めて」



「私もだよ聲!ああっ!動画で見た通りだ!」



券をお店の人に渡し、出来上がる時間を待つ。

隣に座っている七菜さんが、コチンコチンに動かない。


「どーしたんですか?七菜さん。動かなくなっちゃって」



「いや、緊張して。あのアニメで見たままの店で。私もそこにいて、目の前で湯切りが、盛り付けられて、ああっ!」




「お待たせしましたー」




隣で、湯気がモウモウと立つラーメンのどんぶりに手を合わせている、七菜さんがいた.....。

そこまでか.......。

そこまでの地獄だったんだな......。

私はあきれそうになったけど、七菜さんを思うと、優しい声が出た。




「さあ、食べましょう七菜さん。せっかくのラーメンが伸びちゃいますよ」



こくり、こくりと涙目でうなずく七菜さん。

ズズー。

と、2人で味噌ラーメンをすすった。




──美味しかった。もう、死んでもいい。



「いや、私を残してですか?それは、勘弁です」



「ごめん聲。けど、人生の重要なイベントがまた一つクリアされたんだ。分かってほしい」



「仕方ないですね。私もイベント控えてますからね」




ん!?

なんの?なんの?

食いつく七菜さんを、スルーする私だった。





続く






















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ