到着
「次はー、──。お忘れもの無いようにご注意下さい。間も無く到着いたします」
カタン
コトン
カタン
キッキッー
「はっ!!着いてる?着きそう!」
限りなく意識は眠りの中だったけど、かすかに車内放送を耳で拾った私は、バッ!と隣を見る。
「グーグーグー」
やっぱ、寝てたー!!
文庫本を広げて、顔に被せて上向きで、寝息を立てて幸せそうに眠る七菜さん。
私は、七菜さんの文庫本を取り、文庫本で額を打つ。
「おおう!?痛っー。ん?どこだここ?」
そんなですか?
そんな熟睡してたんですか。
「旅行の電車の中ですよ!もう駅に到着します!」
プシュー
ドアが開く。
私達は、あわてて棚から旅行カバンを下ろして駈け足で、電車を降りる。
あっぶなー。
北のさらに北の国へ行くとこだった。
「ご、ごめん聲。昨日の眠気が一気に襲ってきて、耐えれんかった」
「いいですよ。片側だけ寝て、もう一方だけ起きとくのも変ですし。七菜さんも、今日楽しみで寝れなかったんでしょうし」
「聲~」
うにゃりと、ひっついてくる七菜さん。
旅先でも安定のデフォルトだった。
抱きつく七菜さんを、ペリペリと剥がしながら、歩く。
私達は、プラットホームから改札を出て、駅の中に出た。
さすが北の大地。
気温が地元より、4℃か5℃くらい下がっていて、すごく涼しい。
とても過ごしやすい気候だった。
ワンピースから覗く肌に、湿り気の無い風が吹いて当たる。
うん。
気持ちいい。
「おっ。大きな時計台。聲、一緒に1枚とっとこ。すいませーん」
七菜さんは、旅行客風のおじさんに声をかける。
......地味に凄いな。
撮るのを頼まれるのは分かるけど、頼むのは私、無理。
完全に陽キャなんだけど、これで孤独主義だったんだから、すごい仮面のかぶり方してたんだな。
もう、そうではなくなったけど。
とおうより、おのぼりさん丸出しだな、私達。
「ハイ、チーズ」
パシャリ。
真っ白な壁をした大きな駅の、ターミナルの時計台をバックに、決めポーズで写る七菜さん。
私は、少し緊張してしまって、普通だった。
おじさんにお礼を言って、七菜さんと2人。
「後でこの画像、聲に送るね」
「そでした。よろしくです。さて宿に向かいますか、七菜さん」
「まっ、待って聲。ショッピングセンターも、フードコートもあって、ああ!ラーメン!旨そう!」
「はいはい、七菜さん。一旦、荷物置いてからにしましょー。ラーメンは行く。絶対」
コロコロと、旅行カバンを転がし、
七菜さんもトランクを抱えて、駅を後にした。
続く




