車中
カタン
カタン
カタン
電車が、海岸線を通過していく。
青い、日に照らされた青い海が、車窓から見えてくる。
その景色をおかずにしながら、私達は先ほど買った
お弁当をつつく。
列車旅行と言えば、車内で食べる駅弁よね。
普段の、電車で食べたら、そら白い目で見られますから。
堂々と、車内で食べていいのが、遠方旅行の電車の中だ!
海を眺めながら、七菜さんが呟く。
「海、行きたかったなあ~。聲の水着見たかったなあ~」
「いや、見たでしょ。2回もスク水見たでしょ!」
「プールと海じゃ、また風情が違うんだよな~。海をバックにした、聲のスク水が見たかった」
ヤバい。
隣に座っている人の言っている事が、1ミリも理解できない。
バティなのに、分からない。
分からなくていいか。
いいな。
冷えた視線で、七菜さんを見つめる。
ゾクッと、涼夏を得られた様でなによりだ。
この変態さんめ。
変態さんは、イカ飯弁当も完食して、ご馳走さまでした♪と、ごちる。
私の白い目線も、ご馳走さま!?
LEVEL-5の変態さんが、お茶を取り出す。
とってのついた、旧式のペットボトルの様な入れ物に、なんだか懐かしみを覚える。
「うーん、美味しかった~。駅弁でイカ飯を食べれて、人生の内の願いのひとつが、叶ったわ~♪」
「安いですね。まあ、シチュ的には中々無いですから、いいですけど」
私も、アツアツだった釜めし弁当を食べ終わって、お茶で一服しながら、七菜さんに突っ込む。
食べ終わったお弁当の容器を、手持ちのゴミ袋に入れて、七菜さんは、今度こそスマホに差したイヤホンを耳につける。
「聲も聞く?」
「もちです」
片耳ずつにイヤホンを差して、流れてくる音楽を聞く。
前に七菜さんのテントで、聞いたような洋楽のBGMだった。
「七菜さん、これなんて曲ですか?」
「知らない」
「ですよね」
一瞬の静寂の為の、雑曲。
特に、好きで聞いている訳では無い、七菜さん。
いつぞやのラジオを思い出した。
夏の厳しい暑さも弱くなり、ポカポカと温かく感じて、興奮して昨日あまり寝つけなかったせいか、私は眠くなってきた。
「ごめん、七菜さん。一旦おちる」
「うん。私も昨日寝れんかったから分かる。私、本でも読んでるから、安心しておちな」
グー、スピーという私の寝息は、ゴーーーーという、トンネルに入った電車の音にかき消された。
続く




