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喫茶コーデュロイ



「うわあっ.....あっ!」


七菜さんの背中におぶさられた、私の目の前に現れたのは、とても素敵な喫茶店だった。

路地の裏手にあって、こじんまりとした、隠れ家的なお店だ。

特徴として植物園のような、店前に植木ばちが多々とある。大きい鉢から小さな鉢まで。


私は七菜さんに、おんぶから下ろしてもらった。

恥ずかしいのもあったが、この素敵な店を自分の足で散策してみたくなった。


「営業中」の木の札がかかったグリーンの縁をしたドアを開ける。

カランと音がして、男の人の声がした。


「いらっしゃいませ。お、甘木君。ギリギリだよ?早く着替えておいで」


口髭を蓄えた白髪が混じった壮年の、優しい表情で七菜さんを促したのは、この喫茶店「コーデュロイ」のマスターだろうか?


「はい、そうですよ。マスターの吉岡と言います。よろしく、お嬢さん」


「初めまして、筑波聲です。小学3年生です」


穏やかでニコニコしていて、怒る姿の想像がつかないマスターだった。

こういう大人の人は見た事なくて、私にはカッコいい男の人に見えた。


「うちのマスター、ダンディでしょ♪」


早々と、エプロンドレスの姿に着替えてきた、七菜さんが私に聞いてくる。

コクりとうなずきながら、七菜さんのメイド姿に目を奪われた。

ショートヘアに白のカチューシャ。

余り露出の少ない、膝下まであるスカートに、二の腕を隠す、黒の服。その上から、純白のエプロンだ。


七菜さん.......馬子にも衣装?


「聲ー?なんか失礼な事考えてるでしょ?」


そんなエスパーな唯一の友達の、七菜さんがコーヒーを奢ってくれるそうだ。


「最後まで付き合わなくていいよ。会計済んでるから、飽きたら帰っていいよ。あ、でも一声かけてね」


こう言って、七菜さんはホールの仕事に入っていった。

その姿を視線で追いかけて、だけどこの店の店内。

店の中にも観葉植物だろうか?

鉢がいっぱい置いてあって、不思議な空間をしている。

こじんまりとした印象を受けるホールは、植物のせいでもあって、植物の陰に七菜さんが隠れて、姿が分からなくなった。


ちょっとしたジャングルだ。

面白そうなお店だ。


邪魔にならないように気をつけて、席を立ちくるりと店の中を歩いてみた。


中年のおじさん1人、野菜屋さんみたいな人、上品そうなお婆さん1人、小学生のゲーム機で遊んでいる男の子。


お客さんは、私を含めて5人と余り流行ってない店なのね。

ラジオから、ゆったりとした外国の音楽がかかっていて、時間がゆっくり流れている感じ。


うん、退屈はしないな~と!

私は、コーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れて、堂々働く甘木七菜さんを見ていた──






続く











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