北の大地
「旅行かー。日帰りじゃない、お泊まりの旅行、家族以外で、初めて♪ウチのお母さん、許可してくれるかなー?まあ七菜さんと一緒になら、大丈夫だろうけど」
「そ、そうだね。二泊三日かー。理性持つかなー?」
「でも七菜さん。家族旅行で沖縄には行った事あるんですけど、この北の大地宿泊って、どこなんでしょう?」
「ど、どこだろなー?聲、沖縄行った事あるんだ?私、遠方の旅行って、行ったことないから、分かんないや。でも確かに、北の大地って.......?」
2人して、押し黙る。
北の大地は、北の大地なんだろう.....。
私も七菜さんも、何か身の危険を察知して、それ以上突っ込むのをやめた。
雨は上がっており、日は沈みかけ、金星が見える頃
私達は、商店街のアーケードを潜って抜けた。
買い食いでタプタプになったお腹を、少しでも減らそうと、散歩してふらふらする。
「美味しかったですけど、悪魔の誘いはもうやめてくださいね、七菜さん?」
「まだまだ甘いモノは別腹で、食べれそう......うそ、うそ!嘘です、ごめんなさい!一緒に散歩するから!」
凄い目で、七菜さんを睨む私。
「当然です。チャキチャキ歩いて下さい」
「へ~い♪でも、聲と旅行かー。私、家族旅行ってした事なかったから、良い思い出になりそうだ」
「当たり前ですよ」
シャワシャワシャワ
ジージージー
また2人静かになって、蝉の鳴く音で私達は、満たされていく。
もう夏休みも終わりに近い。
いつもなら、あーまた学校が始まる、行きたくない!の、一択だったんだけど、今は。
今、思う事は。
終わって欲しくないな。
その一言だった。
そう思った時間は、初めてだった。
いつも、早く終わらないかなと、思ってたけど。
嫌な時間は長くて、楽しい時間は早くて。
と、俗に言うけれど。
俗に言うならば、この夏休みは長くなかった。
あっという間だった。
あっという間だったけど、全てが記憶に刻まれるぐらい、濃いい時間でした。
「聲との初旅行!入念に用意しなくっちゃ!」
まだまだ、七菜さんとの時間は続くんだ。
続けるんだ!
夏休み最後のつもりで、気合い入れ直す私だった!
続く




