運の祭典
小さな矮躯の節々から、殺意を滲ませながら、私は商店街の福引き会場についた。
2人のおばあちゃんが赤いハッピを着て、とってのついた何やら回すモノを前にして座っていた。
「いらっしゃい。お嬢ちゃん」
「何が当たるかな~?福引券を見せてごらんなさい?」
おばあちゃんは、双子だった。
おんなじ顔で私達に話しかける。
何かある......。
今日は、このままで終わらない、何かが!
ゴクリ。
生ツバを飲み込んで、おばあちゃん達に、福引券を渡す私。
「ほほほ!10回ガラガラ回せるねぇ!」
「欲しいものは当たるかな~♪」
「聲、がんばって!」
後ろで、小学生を見捨てた女子高生が、なんか言ってる。
黙って、七菜。
「そうそう。そのとってをガラガラ回すのさ」
「中から色のついた玉がポロリ♪」
ガラガラと、その抽選機を回す私。
........狙うは、赤色1等!
センテンドー25のみ!
ガラガラ、ポロリ。
白い玉が出てきた。
「5等のポケットティッシュだね~」
「残念だね~♪後、9回!」
くっ!
腹の立つ婆さん達だ!
双子に煽られたら、頭にきた!
「もっかい!」
ポロリ
「また5等」
「はい、リズミカルに回して~」
ポロリ
「またポケットティッシュ」
「またポケットティッシュ」
このくだりが、8回続いた。
私のコメカミの血管がぴくぴくいってるのが、自分でもよく分かる。
肩をガックリ落とす私。
私、運っていう才能無いな......。
まだだ.......!
まだ後2回ある!
悔しさで、歯を食い縛る私の肩に手が置かれる。
七菜さんが、涼しげな顔で私を見る。
「代わろう聲。先ほどの過ちの、償いをさせて欲しい」
「.......出来るってんですか、七菜さん?今引けたら、許すどころか、惚れ直しますよ?」
「望むとこさ。1回あれば十分だ」
憎らしいほど、余裕の表情の七菜さん。
期待せざるを得ない。
期待していいの!?
七菜さんが抽選機を回す。
「今の殺意にまみれた聲じゃ、重たすぎる。こういう運ってのわね、聲。軽い、楽し気に引くものさ!」
ガラガラガラ
ポン!
赤い玉!
1等だ!!
センテンドー25だー!!
カラン、カラン!
双子のおばあちゃんが、手にした鈴を鳴らして、私達を祝福してくれる。
「1等出たよ~」
「おめでとう♪おめでとう♪」
七菜さんに抱きつく私。
凄い!
凄いよ、七菜さん!
七菜さんは、伊達ギャンブラーじゃなかった!
「これで許してもらえたかな?もう1回は、オマケだね」
ガラガラガラ
ポン!
金色の玉が出た。
双子のおばあちゃんが鼻水を足らしながら、手にした鐘を振る。
カラン!カラン!
「特賞!!」
「特賞出たよー!!」
へっ!?
目が点になる展開の、私と七菜さんだった。
続く




