アインマル
それから3日が立った。
私は、あれから意地を張って、七菜さんに会っていない。
会ってはいないが、公園の外から見守り......監視していた。
七菜さん。
ああ、七菜さん。
そんなチキン野郎なんかと、そんなに楽しそうに。
ああっ!そんなに撫でて。
ぐぬぬっ......!
目の前で、イチャつかれて怒りゲージはMAXだ。
駄目だ、もう見ていられない!
チキン野郎を、どうしてくれようか?
七菜さんに、目を覚ましてもらわないと!
「聲、今日も来ないのかなあ......?」
......!!
待ってて下さい七菜さん!
今そのチキンを排除いたします!
七菜さんが、お手洗い(多分)で席を立った時、テントにニワトリ1羽。
さあ、雌雄を決しようじゃないか.......。
湿気の無い乾いた砂ぼこりが、足元を舞う。
ザリッ
私は、アインマルの前に立ちはだかった。
アインマルは、動かない。
しかし、目線はこちらを向いていた。
「コケー!!」
目の前の、アインマルじゃない!?
後ろ?
後ろから鳴き声が聞こえた!
私が振り返ると、1羽の軍鶏がいた。
「な、なんで!?ちょっ!襲ってきたあ!!助けて七菜さーん!!」
私の横を、1羽の白い影が通り過ぎる!
「アインマル!」
私を襲おうとした軍鶏に、猛然とアインマルはかかっていった。
激しいバトルが、始まった!
羽を、バサバサとはためかせながら、鋭い足で相手を蹴り、くちばしで突き刺し合いだった。
「カッカッカッ!」
「コケーーーー!」
尻もちをついて涙目の私に、七菜さんが走りよってくれた。
「聲!大丈夫?ケガない?」
「はい。大丈夫です。アインマルが助けてくれました」
すると、1人の知らないお爺さんも走りよってきた。
「お嬢さん方、怪我は無いですか?それまで!それまでじゃチヨマル!」
軍鶏がひいた。
戦闘態勢をやめた。
アインマルもひいた。
「申し訳ない。ウチの軍鶏が逃げてしまい、お嬢さん方に恐い思いをさせて。本当に申し訳ない」
お嬢さんは、平謝りだった。
七菜さんが口を開く。
「聲が無事だったから、いいよ。でもお爺さん、申し訳ないついでに一つ頼んでいい?」
私が無事なら.....!
七菜さん!
「アインマルを連れていって欲しいんだ」
.......!!
「それぐらいなら、構わんがいいのかね?」
「お願いします。1人で、少し試したい事ができました。聲もアインマルにお別れ言いな?」
「お別れどころか......助けてもらったお礼も。アインマルの事、勘違いしてた。ごめん、ありがとうアインマル」
私と七菜さんは、軍鶏と戦ってボロボロの羽を撫でる。
白い小さな1羽の勇者を。
「コケコッコーーー!!」
勇者は、一声あげた。
続く




