シャギー
「さて、金髪にもしたし。後は切るだけなんだけどな?」
金髪になった七菜さんが、楽しそうだ。
いつものパターンで私も返す。
「いや、私は切れないですよ?失敗したら嫌だし」
「私の髪だし、いいんじゃ?」
「だ・め・です!もうちょっと、髪大事にして下さい。七菜さんの髪切って失敗するなんて、私には耐えられません」
「.......想われたねどうも。んじゃ、いつも通り、自分で切るか」
毎回、じ、自分で切ってたのか!
信じられない人だな。
全然違和感なかった!
え、じゃあなんで私に?
「いやー、聲に切ってもらって、髪触られてウトウトしたかったw」
「いくらでも触ったげますから、お店行って下さい」
七菜さんが自分で切って、このクオリティ。
ならプロに切ってもらったら?
一体どうなってしまうのか?
私は知りたい。
単純に見てみたい。
「じゃあ、お金借りるね?ほんとにいいの?」
「構いません、構いません。先行投資ですから」
お札を渡して、近くの美容院に入る私達。
店長さんのおばさんが、迎えてくれる。
「あら、聲ちゃんいらっしゃい。今日は、どうするのかしら?」
「いえ、今日は連れのこの人をお願いします」
「はい、いつもしっかりしてて偉いわね。お姉さんは初めてね?どうしましょう?」
「は、はい。短めのお任せで!しゃ、シャギーとか!?」
七菜さん、緊張してた。
シャギー?
シャギーなんぞ?
七菜さんの注文に?が着きつつも、私は座って待つ事にした。
しゃきん
しゃきん
と、ハサミの音が気持ちよくて、自分が切られてる訳でもないのに、眠くなってきた。
最近、変な夢ばっかりで、まともに寝た気がしなかったからなあ......。
「──聲。こーえ!終わったよー」
七菜さんの声が聞こえる。
ハサミの音に誘われて寝ちゃってた。
うーん!
深い眠りだったなあ、睡眠はこうでないと!
背伸びをして、七菜さんを見る。
「金髪の綾波レイがいる」
「こんなんなりました~」
夏の冒険のひとコマだった。
いや、まあ色々試してみないとね?
私は、この七菜さんの髪型は嫌いじゃない。
男前女子な七菜さんのイメージが、少し柔らかくなって、女の子寄りになった。
「私も女の子なんだけどな~」
隣で、ニガリツ多めで呟く七菜さんだった。
続く




