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お買い物






汗を拭いて服を着て、私達はタイエーに来ている。

スーパーの中は、冷房が効いていて凄く涼しい。

七菜さんとこにいると、エアコンのありがたみを嫌というほど知る。

七菜さんはこの暑さの中、野営して慣れてるんだろうけど。



「あー!クーラー最高!文化の極みだよ!」



慣れてなかった。


そりゃ、そうだよね。

この暑さに慣れれたら、クマムシだよね。

私達は、体を冷やすため、何を買う訳でもなくブラブラと、商品を見て回った。



「タイエーいいよね。この安心して買い物が出来る感じ」



「あっ。それは分かります。年齢層高めだけど、そこも安心できるというか」



「安いしね。助かってるよ」



七菜さんは、夕食の材料を買い物かごに入れていく。

今日も、お肉かあ......。

七菜さん、ほんと肉食系だね。

私も気をつけないと。

いや、嫌ではないんだけど。


レジが混雑していて、前の人の買い物の量がハンパない。

かなり待たされそうだ。

と、小柄なパートのおばさんがヘルプする。



「次のお待ちのお客様。どうぞ」



小気味良く、商品をスキャンしてさばいていく。

さりげなく、良い仕事をするおばさんだ。

大きくなったら、このおばさんみたいな仕事がしたい。



「Woonで」



七菜さんが、まさかの電子決済だった。

いや、偏見だったけど、まさか持ってるとは.....。

七菜さん借金は駄目ですよ。



「大丈夫。チャージしかしないよ」



なんだろう。

いつものいい加減なイメージの七菜さんが、しっかりしてる。

駄目な七菜さんでいて欲しい私がいた。



「そーいやさー、なんかの本で読んだんだけど。死神の払い方ってあってさ」



商品をトートバッグに詰めながら、なんの脈絡もない話しをする七菜さん。

レジ袋は、有料だもんね。



「死神は、2回夢枕に立つんだって。1回目は足元。2回目は枕元に。1回目の足元に立たれた時は、なんかね。落語みたいな呪文を唱えたら、追い返せるんだって。でも、2回目の枕元に立たれた時は、もうお仕舞いなんだって」



「七菜さん、変な本読みますねえ。で、呪文ってどんなのですか?一応」



「忘れちゃった♪けどね、聲。さっき、寝袋で寝てた時にね。足元に立たれてたんだよ、死神に。いや、見えないけど嫌な感じが、足元からしたんだ」



「えっ。じゃあ呪文は?」



「いや、聲の私を呼ぶ声がして、このまま連れていかれちゃいけない!そう思ったら、夢うつつの中で、腹の底から叫んだんだ」



「それで、死神を払ったと?無茶苦茶ですね」



「聲が呼んでくれなきゃ、声出せなかっただろな。愛の力だね!」



「まとめなくていいです」



──しっかし、七菜さんも私も今日の夢、けっこうなピンチだったをだな。

真夏の夕暮れ。

逢魔が時の時間。

引きずられないようにしないと。



あの夢にも意味はあった訳だ。

七菜さんを守れてよかった。

夏の日は長いけど、日が落ちる前に、七菜さんと別れて家路につく私だった。





続く

















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