お持ち帰り
「ちょっと、くすぐったい七菜さん。狭いんですから動かない。ていうか、今何時ぐらいですか?」
1つの寝袋に、2人の女の子が入ってモゾモゾしていた。
「夕方の6時ぐらいかな。そろそろ起こそうと思ってたんだけど、聲かなり深く眠ってたから」
「というか、七菜さんが裸なのは、もう仕方ないとして。どうして私も裸なんですか?自分で脱いだ記憶がないんですが?」
「いや、涼しくなってきたとはいえ、残暑厳しい日々。熱中症になってはと思い、脱がせてあげようとした次第で」
「何が次第でだ......」
頭をはたこうと、体を動かしたらモゾモゾじゃなくて、汗でヌルヌルと擦れあった。
お日様も沈んでないってのに、何してんだ。
いや、沈んでも年齢的にアウトだよ。
「大丈夫、聲!同性だからアウトじゃない!」
ほんとかどうか知らないけど、倫理的な意味でね?
それと、私が寝ていたから仕方ないとして、七菜さん寝袋入る意味なくない?
「えっなんで?」
凄いショックな顔された。
んじゃ、もういい。
いつもの事だし。
こーやって常態化していくのが、駄目なんだろな。
流されて、気づかない内にただれていく。
人は快楽に逆らえないのだ。
「前から思ってたけど、聲。あんまり小学生っぽい思考しないね」
「そーですね。大人びるというか。なんか、霊能あるそうですし」
「ふーん。私は無いなあ。ん?聲その手に持ってるの何?」
七菜さんにうながされて、自分の手を見てみた。
七菜さんに突っ込むのに忙しく、気づかなかったけど、鈴を手に握っていた。
「こ、これは──」
「こんなの持ってた?聲、脱がす時こんな鈴無かったけどなあ」
夢の中で、妖かしの宿で。
誰もいない部屋でポケットに入れた鈴。
持ってなきゃいけないから拝借したけど、まさか現実に持って帰ってこれるとは!
「うん、この鈴。髪飾りに出来るね。私の鈴の髪飾りとお揃いね♪でもこの鈴鳴らないね?錆びちゃってるのかな?」
「そ、そんなハズは。夢の中ではチリンチリン鳴いてたのに」
「ふふっ。聲の言う通り、本当にその力がその鈴を、夢から持って帰れたのかもね」
「なんだろーか......」
夏の夕暮れのテントの中で、裸のせいでクシュン!と小さなくしゃみをする私だった。
続く




