大きなつづらと小さなつづら
「どこだろ、ここ」
宿を、あちこち歩き回る。
この宿、こんな広いの?
外からの見た目と違う。
四次元か.......。
よくさっきまで、適当に歩いてたな。
そう。
今は、闇雲に動いている訳ではなく、
チリン
ポケットに入れた鈴が鳴る方へ、移動している。
歩けば、そりゃ鳴るだろうなんだけど、不思議な鈴で、別れ道にきたら合っているだろう方を、進むとチリリンと大きく鳴るのだった。
「聞こえた声の通りやってるけど、けっこー歩いてるよ」
歩いていると、大きな玄関にたどり着いた。
夜のはずだったのに、日の光りが差し込んでいる。
行きに来た時の玄関より、なんか立派な玄関だ。
おかしい......。
この宿は、玄関2つあるの?
いや、なんでもありの夢だしなあ。
のっぺらぼうの中居さんが、受付で立っていた。
「あらあらお帰りですか、お客様。よくここにたどり着けましたね?普通の人ではまず無理なんですが」
つるんつるんの顔なんだけど、中居さんが驚いているのが、直感的に分かる。
便利だな、直感。
「ぱんぱかぱ~ん!」
中居さんが、急にテンションを上げてきた。
な、なんのイベント!?
「おめでとうございます!お客様は、当宿で祝!100万人目のお客様です!記念いたしまして、こちらのつづらをお持ち帰り下さい!」
目の前に、小さいつづらと大きいつづらがある。
なんか、こんな話あったな。
「両方もらっていいですか?」
「どっちかにして下さいね?ビッグorスモール!」
ここはカジノかい?
確か、お話しでは小さいつづら。
謙虚な心の美徳。
しかし......!
度重なる私の直感が、違う!という!
欲はかいた方がいい......と?
そして、たぶん.....。
直感に従い、私はその場で大きい方のつづらを開けた。
「あら正解♪欲しい者は手に入りましたか、お客様」
つづらの中に、一糸まとわぬ七菜さんが入っていた。
いや、なんか赤いリボンでデコレートされてるけど。
「会いたかったよ聲。私がプレゼント?」
「私に聞くなー!!」
やっぱりか!!
ニュータイプばりの直感だな、私!
うふん♪と七菜さんが抱きよってくる。
抱きつかれるまま、のっぺらぼうの中居さんに聞く。
「普通の人じゃ、たどり着けないって言ってましたけど、そん時はどーなったんですか?」
「ずっっと、当宿に居て頂く事になっておりましたよ?」
また、のっぺらぼうの中居さんが、ニヤリと笑った気がした。
こ、怖いんですけど!
けっこう危ないとこだったんだな......。
「帰ろー♪帰ろー、聲♪」
「あーもう、くっつかないで下さい七菜さん!フニュフニュしますから!」
私達は、大玄関を開けて光りに包まれた──
「ん、んん......」
ここ、どこ?
眠い目を開けると、テントの中?
寝袋に入ってるみたい。
背中が、まだフニュフニュと柔らかい。
「起こしちゃった?」
振り返ると、そこには七菜さんの顔があった。
また、この人は裸で。
でもあたたかいし、いっか。
私は、凄く久しぶりな感じのする七菜さんに、挨拶をする。
「ただいま。七菜さん」
続く




