行ってみたいと思いませんか?
........?
眠い目を擦りながら、私は起きる。
しかし、妙だ......。
不思議な違和感を感じる。
お母さんが部屋のドアを開けて
「あら、おはよう。今日も七菜ちゃんとこ行くの?行く前に、お昼食べなさい」
バタン!
.......パタパタパタ
ドアが閉まり、お母さんの、スリッパの音が遠退いていく。
私は、寝起きの割には妙にハッキリした頭で、ドアノブに手をかけた。
かけたところで、ハタと気づいた。
「.......分かった!夢だコレ!」
と、するならば?
するならば不条理な展開が待っている。
例えば、このドアの向こうが......。
部屋のドアを開けたらトイレだった。
「やっぱり(笑)お母さん出てったのにw」
不条理な夢の中も、夢だと自覚したら。
どんな展開が来ても笑ってしまう。
怖さゼロ!
むしろ何があるのか、ワクワクしてしまう。
「部屋から出れる、ドアの向こうがトイレということは?......ということは、多分こうなんじゃないかな!?」
私は部屋に掛けてあるフリキュアの、タペストリーをそっと、横に避けてみた。
──ビンゴ!
壁に丸い穴が空き、穴の向こうに2階の廊下が見える。
私は、うひゃひゃ!と笑いながら、穴をくぐる。
どーなってんの(笑)
四次元のアスレチックみたいになっていて、私はテンションが上がってしまった。
「つ~ぎ~はなにか~な~?」
2階の廊下を歩き、1階への階段を降りようとしたら、階段の真ん中に──
とっても、おっきいワンちゃんがいたのね?
黒くて頭が三つもあって。
ヨダレ凄いタレてる。
私は、両手で口をふさぎながら、後ろに後ずさった。
危うく悲鳴がもれるところだった。
なんで家の中に、あんなんがいるの!?
お母さんどーやって降りたんだ!
.......って、夢だしな。
まともに考えても。
「聲ー!早く降りといで?お昼冷めちゃうよー?」
お母さんの呑気な声が聞こえてくる。
夢でも、あれの横は通りたくない。
なら、どうするか?
.......どーしようもない!
私は、2階の廊下の端にある小窓を開けた。
そして、自らの小さい体躯を小窓にねじ込む!
「出れた!」
小窓をギリギリ抜けて、雨どいに掴まる。
小学生低学年の重さなら、大丈夫。
耐えれる。
スルスルと、猿の木登りの要領で降りていく。
.......着地!
「どんなもんよ!」
じゃない、じゃない。
お昼、お昼。
ガラリと玄関を開けると、押し入れだった。
いけない、いけない♪
庭のベランダの窓から、台所に出る私。
「遅かったね。早くお食べ?」
「いっただっきまーす!」
......うん!
味もするんだ!夢の中だけど!
見た目、カレーで味はオムライスだけど.....。
変な味じゃなけりゃいいや。
「ごちそうさまー!」
「七菜ちゃんによろしくね」
私は、お昼を食べ終えてベランダから外に出た。
外は、あっという間に夜だった。
どうしよう.....、夜道は怖いなあ。
さっきまでお昼だったのに。
躊躇している私の視界の上から、白い、真っ白な細長い鱗のついた体から、四肢が出た。
──ホワイトドラゴンが目の前に現れた。
続く




