駅前
人がごったがえす時間の街の駅前。
ぐう~。
と、お腹が鳴る。
もう、そんな時間か。
七菜さんとこ寄る前に、なんかお腹に入れとくか。
「マックでも食べて行こーかなー?久しぶりにテリヤキバーガー食べたいなって、ん?」
視界の端に、七菜さんによく似た人を、捉えた気がする。
いや、でも.......立ち食いそば屋だったし.....。
いくら七菜さんでも。
年頃の乙女。
花の女子高生だもんね。
まさか、立ち食いそばを食べてるはずがない。
私は、一応確認ということで、バックステップを軽やかに踏んで、立ち食いそば屋を覗いて見た。
そばをすすっている、七菜さんによく似た人と目が合った。
私が、ジーとじと目で見ると、気まずそうに目をそらした。
七菜さんによく似た人、いや本人様だ。
分かってましたけどね?
七菜さんのパーソナルを考えたら。
「なにしてんすか、七菜さん?」
「こ、聲じゃないか~、奇遇だね」
「しかも、ジャージって、気ィ抜きすぎじゃないすか?」
「制服、クリーニング中なんだよー!見逃してくれよー、聲さんよー」
ちょっと逆ギレ気味に、誤魔化そうとする七菜さん。
逃がさん。
「こないだの、牛丼屋の時も少し思いましたけど、七菜さん中身オッサンすぎません?あの時は、エスコートされる側だったので言いませんでしたが」
「お、オヤジギャルとはよく言ったもんだよね~」
「時代が古い。誤魔化せてない」
グッと、つまる七菜さん。
手には七味唐辛子を握りしめている。
ジャージ姿に映える仕草だった。
「まあ七菜さん、中身変態ですから、今さらオッサンが追加されたとこで、どうとも思いませんけどね?月見そば下さい」
「聲、渋いの食べるね!?」
「ついでですから、私もお昼食べます」
「はい、お待たせ」
ここも、商品が出てくるのは早い。
サッサッと、七味唐辛子をかけてすする。
月見の卵をつぶさないように。
「な、なんか聲手慣れてない?」
「七菜さん、そば延びますよ?」
私が反らすと、七菜さんは慌ててソバをすする。
七菜さんは、タヌキそばを食べていた。
七菜さんの方が少し早い。
私は、同時に上がるようにペースを早める。
ズゾー
ズゾー
女の子2人で並んでソバをすする。
隣にいた着流しのお兄さんが、やるじゃねえか。という目で見ていた。
「聲、ほんとに初めて?」
プハアと、だしを飲み干した七菜さんが、再度聞いてくる。
私は、最後に卵の黄身をツルんと飲み干した。
ご馳走さまでした。
私は七菜さんを見て、ニヤリと答える。
「私も中身オッサンなんですよ」
続く




