ラジオ
──♪
「これ、何て曲ですか?」
ラジオから流れてくる歌が耳について、なんとなく七菜さんに訪ねてみた。
「知らない。ただ垂れ流しで聴いてるだけだし。洋楽ってのだけは分かる」
「そうですか。外で聞くラジオって、なんかいいですね。BGMとして景色に馴染むっていうか」
「んー、静寂は大好きなんだけど、その為には、うるさくない雑音も日々の中いるんだよねえ」
「あ、それでですか。孤独大好きな、七菜さんがラジオを聞くのが違和感ありました」
「酷い言われようだけど、そうだね。最近は、無音だけでもやりきれないのさ」
「私の責任?(笑)」
「分かってるじゃないか。こっちおいで、聲」
七菜さんがあぐらをかいている足の間に、ちょこんと私は座り、七菜さんは私の首筋に腕を回し、軽く抱きつく。
「ほんと聲のせいだぞー。あーこうしたら、死ぬ程落ち着く」
「アッツイですけどね」
「私達もね(笑)」
言わんでも.....。
通常運転でベタベタする私達。
汗でもベタベタする。
ベタ展開?
七菜さんがチャンネルをイジる。
なんだか早口の実況放送だ。
「さあ、各馬第4コーナーを回って最後の直線に入りました!逃げるコンドミラクル!迫るサンセクター!最後方からユキノチャンが突っ込んできた!」
背中に感じる七菜さんの体温が、2℃ぐらい上がったような!?
「よし!取った!ユキノチャンよくやった!いやーアッツイわー」
「......賭けてたんですか?」
「いや?エア予想だよ?私まだ17だよ?馬券は大人になってから!」
「なんでエアでそんな熱くなれるんですか......」
「成績けっこういいんだよ?もし、買えてたら......って考えたら熱くならない?早く20才にならないかな。荒らしまくってやるのに.....」
なんか、久しぶりに黒い七菜さん見たな。
似合うかも知れないけど。
「さあ、各馬ゲートに入ります。7番、アジノフレーバー暴れて入りません。誘導員がゲートに誘導しますが、嫌がって入りません」
「ちっ.....、アヤがついたか。こーゆう時は荒れる......」
なんか、女子高生のバイニンさんが呟いている。
というより、少し気にくわない。
「七菜さん、私の前で競馬しないで下さい」
「.......!賭けてないよ!?」
「そーゆー事もありますが、違います。私を置いて盛り上がらないでください。すねますよ?」
言っといて、プーと膨れる私。
七菜さんは目を見開いて、ハッとする。
「イチャイチャ!イチャイチャしよう聲!」
くっついてくる七菜さんを押し退けるふりをする私だった。
続く




