実食!
昼を迎える前に納竿だった。
釣れるもんは釣ったから。
後、暑い。
「でも七菜さん。テレビかなんかで見たんですけど、魚逃がしてませんでした?」
「キャッチ&リリースだね。バス釣りじゃ常識なんだろうけど、私は違う。魚は食べる為に釣る。キャッチ&イートだ」
「わお......。さすが超人。てか、ブラックバス美味しいんですか?」
「釣れた場所にもよるけどね。今日のは大丈夫。そこまで臭みは無い」
クーラーボックスを担いで(七菜さんが)私達は、湖の直ぐ近くにある、牧場兼キャンプ場にやってきた。
釣れた魚を調理して、ここでお昼という訳だ。
「さて。刃物の扱いは、聲も慣れてはいるけど、今日は一応私が捌くね。聲は、お米を洗って飯ごうで炊いてみよー」
「そんな!?」
「ご飯ぐらい炊けないとお嫁にいけないよ?」
「お嫁にいっていいんですか?」
「私のとこに来てね?」
「.......」
「.......」
なんかモヤモヤした空気になった。
恥ずかしいやら、恥ずかしいやらで。
あんまりその場のノリで言うの、気をつけよう.....。
七菜さんもおんなじ様な顔をしていた。
さて、火は七菜さんに、起こしてもらった。
まだ危ないからね。(刃物は使えるけど)
こ、これがフェザースティック!
動画以外で、初めて生で見た。
種火を作って、火を大きくしていく。
飯ごうをぶら下げて、火吹き棒でフー!と息を吹き込む。
「始めチョロチョロ中パッパッだっけ.....」
じゅわー♪
隣で七菜さんが、バスをさばいた身に小麦粉をふって、ムニエルを焼きだした。
不覚にも、よだれが落ちそうだ。
お、美味しそう......。
「聲のご飯も期待してるよ?」
笑顔でプレッシャーをかけてくる七菜さん。
上等!
フー!フー!
息を吹き込んで、火を強くする。
飯ごうの蓋の隙間から、吹き零れてくる。
泡がプクプクと。
我ながら、美味しそうだ.....。
ゴクリ.....!
七菜さんの生ツバを呑み込む音が聞こえた。
はい、いただきました。
しかし、最後で気を抜かない私。
「赤子泣いても蓋とるなってね!」
──実食!
ブラックバスのムニエルに、
クレソンのソテー。
レモンとバターを添えて。
炊きたてのご飯、
お焦げもあるよ!
まあ、勝負とか関係なくね?
美味いもんは美味い!
ご馳走さまでした。
「いやー美味しかったですねー」
「うん。お嫁に来てね」
「七菜さんまだ言ってる。嫌ですよ。七菜さんが来て下さい」
「2人揃って、嫁より旦那サイドの精神!」
「まあ、2人とも嫁で」
2人でお揃いのウエディングドレスでも、着ますか──
続く




