釣果
「わ。わ。わ!ど、どうしよ!かかっちゃった!」
私のロッドがしなる。
私が釣れるという想定をしていなかったので、どーしていーのか、慌てる。
「聲!ロッドを下げながら、リールを巻いて!そしてまたロッドを立てて!」
無我夢中で、七菜さんのアドバイス通りの動きをする私。
ん?
なんか、軽くなった?
大きな魚影が水面に、ちらつく。
「.......!いけない!ロッドを下に向けて!」
七菜さんの声の通りに動いた。
けども、一瞬反応が遅れて間に合わなかった。
バシャッ、バシャッ、バシャッ!
ブラックバスが、水面を跳び跳ねて、大暴れした。
そのせいなのか、張っていたラインが、プツリと切れてしまった。
巨大なブラックバスは、スルスルと水の中に潜っていった。
「んー、残念。エラ洗いだよ。聲」
「なんですか?それ」
「ブラックバスが、水面で暴れて、エラでラインを切ろうとするのさ。だからロッドを下に向けて、バスを水面から浮かび上がらない様に、しなきゃいけなかったんだよ」
......うーん。
魚のクセに生意気な。
「......悔しそうだね、聲。いい事だ。聲は、釣り運はあるよ。バラしたとはいえ、初めてであんな大物がかかるんだから」
「......でも偶然です。狙い通りにキャスティングも出来ないし」
「そりゃあ初心者は誰でもそうだよ。でも聲が、あんまり悔しそうだから、初心者にも出来る策を1つあげよう」
「策?」
私達は移動した。
湖に水が流れてきているポイントに、こっそりと移動する。
頭を下げて、小さい声で。
「いいかい、聲?これは何回も出来る手じゃない。一発目が勝負だ。目の前の、水の流れこみの所にコイツを落としこむ。これならキャスティングが出来なくても狙える」
「なるほど!七菜さん、これは?」
「針にチョンガケしたソフトベイトだ。フリーフォールで落としこんで、反射的に食わす。当たったら、即合わせなよ」
「了解であります!」
なんかドキドキしてきたな。
ちょっと楽しいじゃない。
私はソッとラインを垂らして、仕掛けを落としこんで、その一瞬を待つ。
.......まだか!
来い!
来い!
スルリ
スルリとラインが出ていく。
......コツン!
「乗った!フィーシュ!!」
うおおおっと!
無我夢中で、リールを巻いてロッドを立てる。
バシャッ!
ブラックバスが釣れた!
釣れた!
やったあ!!
「グ~ド♪30cmだね」
指で大体の大きさを計ってくれた七菜さん。
私も思わず真似したけど、でもこの妙な英語なんです?
「いや、私つりどれんだから」
よく分からない答えを返す七菜さん。
いや、いっか。
釣れたから!
「ふっふっふっ。釣れるって、楽しいだろう?」
七菜さんが、わいるどな笑顔で、私を釣りの道に誘うのだった──
続く




