漫画喫茶
──私、恒例の漫画喫茶へ行くんだが、聲もどう?
七菜さんに、唐突にこんな風に誘われた。
漫画喫茶かあ......。
行った事ないから初体験だ。
ジュースとか、飲み放題なんだよね!
ちょっとワクワクしてきた。
「七菜さんテント暮らしだから、テレビとかどうしてるのかと思ったけど、漫画喫茶行ってたんだすね」
「うん。まあ、テレビはもうほとんど追いかけてないんだけど、定期的に同じヤツを繰り返して観てるんだ」
「?そういうのって、飽きないんですか?1回観たら、もう十分ていうか」
「うん。まあ好きだから何回も観る、というのもあるんだけど、私はそれに救われたからなあ.....だから定期的に観るのは、儀式かな」
「儀式?分からないですね......どんなの観てるんですか?」
「うん。アニメでね。女子高生がひたすらラーメンを食べてる話なんだ」
「それに救われたんですか?」
私達は、漫画喫茶で受付をして、2人用の部屋を確保する。
ジュースも入れて、部屋に持ち込む。
そして話していた、女子高生がひたすらラーメンの食べるアニメを一緒に観賞する。
「聲もないかい?食欲が無くなる事。つらい事があって、本当になにも食べる気にならなくなった事が、私はあったんだ。何も食べずに何日か過ごした」
「それ拒食症に近いんじゃ......。もう断食だし......」
七菜さんは虚ろな目でスクリーンを見つめている。
その時の事を思い出しているんだろうか?
七菜さんが、つらかった事ってなんだろう?
「そして、たまたま深夜に放送していたこのアニメを観たんだ。観ていたら、グ~とお腹がなったんだ。ラーメンが食べたいって!その足で、もっこすに行ったよ(笑)私は、このアニメに救われた」
「そして定期的に観る。なるほど儀式ですね」
でも.......
「私は、その時の七菜さんが何に苦しんだのか知りたいです。嫌じゃなければ教えて下さい」
七菜さんの太ももに、私は手を置く。
七菜さんは苦笑する。
「それが、なんだったか、さっぱり検討つかないんだ。今、思い出しても何に苦しんだのか分からない。ただ、つらかったとしか憶えていない。適当に、のらりくらりやる性格が災いしたんだろうな」
「でも、もう大丈夫ですよ?私が七菜さん観てますから」
「恐いなあ......。でも聲を抱き枕にして寝たら、ストレスフリーだろうな」
「それは私もですね(笑)」
そして七菜さんは、そのアニメから他のグルメ漫画や、飯テロ系を紹介してくれた。
うん。こういうとこに需要があったんだなあ。
そして、時間一杯まで観ていたら、何か食べたくて仕方なくなった私達だった──
続く




