雨上がる
雨は上がった。
嵐は過ぎた。
あれから日々は何事もなく過ぎている。
けど少し変わった。
七菜さんが結構頻繁に家に来るようになった。
やっぱり、野武士とはいえ、七菜さんもうら若き女子高生。
一介の乙女である。
女の子が普通に、公園で寝泊まりしていたら、家に来いと良識ある大人なら言うだろう。
「外はまだレベルが高い。最初は屋根の下にしときな」
うちのお母さんに、良識を求めるのは間違いだったようだ。
私は、このお母さんの娘なんだなあ~。
と、逃れえぬ業を感じていると、後ろから七菜さんが甘えてくる。
最近、求められてくる事が増えた。
無自覚が自発的になって、ようするに、
七菜さんが素直に.......。
「......聲。どうもこないだ聲に攻められてからというもの、調子が狂っちゃって、その......なんだか聲に甘えたくなる......ハア。どうしちゃったんだろう私」
た、愉しい~!
なんというか!
懐かない野良猫にエサをあげて、ようやく背中を撫でさせてもらったような。
そんな感慨が深々と込み上げてくる。
私の首に回った七菜さんの腕を掴んで、後ろを向き七菜さんの顔を見上げて、私は言う。
「いつでも甘えて下さい。私も十分甘えますから」
「じゃあ、もうコレはいいかなあ......」
七菜さんはスカートのポケットから、ぼろぼろのタオルを出した。
「私、ブランケット症候群ってさ、小さい頃からのお気に入りの、このタオルが無かったら落ち着かなかったんだ......」
七菜さんの手元にある、ぼろぼろのタオルに私は、そっと手をやった。
「私は貴女の側にいます。だけど、持っていてあげて下さい。歴戦の戦友でしょう?私にも、七菜さんに出会う前からの戦友はいます」
私は、部屋の隅に飾ってある、大きな熊さんのぬいぐるみを指差した。
七菜さんも目をやり、フッと笑う。
「あの子を、抱き締めてたんだ?」
「毎晩ね」
私もフッと笑う。
私は、部屋着のシャツ1枚に可愛らしいパンティ1枚のあられもない姿で、七菜さんも同じような格好で、2人でベッドの中でくっついてた。
2人の体温が重なってちょうどいい温度になる。
それこそ、ぬるま湯のような温度と、関係の私達だった。
「あ~ただこうしてるだけで、気持ちいいな~も~なんもいらない。学校始まんなくていい~」
「~七菜さん、私は、これから先が逆に怖いです~七菜さんいなくなったらって考えたら......」
「.......聲がいない?」
ブワッ。
と音がするかのように、七菜さんの瞳が涙ぐんでいく。
想定したら、涙が......。
七菜さん、幼児化過ぎないか。
「だ~いじょ~ぶ~ですよ~!七菜さんお姉さんでしょ?しっかり~、しっかり~」
「......だ、大丈夫、我にかえったら、なんのプレイ?これ」
「幼女にされる、赤ちゃんプレイ!」
「へ、変態だー!」
何を今さら!
私達が、そこを恐れていてどうする!
と、揺籃の師が言っています。
実の母が。
いや、私の中のね?
「いや~、もう切っても切れない仲だねえ私達!」
「今さらの今さらですよ七菜さん」
嵐は過ぎた。
雨は上がり、土はドロドロのぐっちょんぐっちょんで、それこそ、切っても切れない仲になってる私達だった──
続く




