攻める愉しみ
「2人でイケない事してた?」
「そんな訳有るでしょお母さん。タガが外れた事、言っちゃって、もう」
「さすがは私の娘。小学生レベルじゃねー。お昼出来てるよ。七菜さんも食べちゃいな」
「きょ、恐縮です」
下手に隠そうとすると、怪しまれるからウイットにとんだ会話にしてみた。
ドツボな気もするけど、うちのお母さんなら、面白ければOKなトコあるから、いける、いける。
お昼は、冷や麦だった。
めんつゆにつけて、スズズッ!とすする。
七菜さんは、我にかえった様で、本当に恐縮していた。
自分のした事を思い返して、赤らんでいる。
私と目を合わせられないのが、その証拠だ。
上目遣いに七菜さんの顔を覗く。
七菜さんは私の視線に気づいて、目を反らしながら
冷や麦をすする。
.......照れてる。
ふむ。
若干、楽しくなってきた。
台所のテーブルの下。
イスから伸びる足が4本。
短い方の足先が、長い方の足のふくらはぎを、
ツイッと涼しげに撫でる。
「ブホッ!!」
目の前の七菜さんがむせた。
冷や麦が、あろう事か鼻から出てしまっている。
年頃の乙女が見せてはいけない醜態だった。
羞恥に歪む七菜さんの顔を見ていて、私は大層興奮した。
なるほど。
七菜さんは、いつもこんな気持ちで私を弄んでいたのか。
分かる。
今、分かった。
いや、これは愉しい。
受けの美学もあるが、基本愉しいのは攻めだった。
「小学生のする顔じゃあ、無い......」
七菜さんが怨嗟の言葉を呟く。
今の私、そんな邪悪な顔してるのかしらん。
「私は、とんでもない怪物を産んだのかも知れない」
そんな邪悪な顔を、お母さんに見られていた。
最悪だ。
どんなコメントだよ、母!
「はいはい、イチャつくのは後にして、さっさと冷や麦食べ切りなー。伸びたら食えないからね」
なんか、色々と理解力がありすぎるお母さんだった。
こんなお母さんだらけなら、世界は悲劇を生まないのだろうな。
そんなお母さんを1階に残して、私達は再び部屋に
戻り、カチリと鍵をかける。
「自分でかけるんだ、聲」
「七菜さんは、もー落ち着いちゃってるようだけど、私はちょっと愉しくなってきたから」
スッと、近付き七菜さんの腰に手を回して抱きつく。身長差を生かして、自然と七菜さんの胸元に私の顔がうずくまる。
「柔らかいな~」
「こ、こらっ!聲!」
フニフニフニ。
七菜さん、ボーイッシュな見かけによらず以外とあるんだよな。
暖かい体温を感じながら、その感触を顔で愉しむ。
ほどよく照れてる七菜さんが可愛い。
ニヒヒッと小学生がしてはいけない顔で七菜さんを見た。
「ちょ!こ~え~!」
七菜さんが怒って、ギュウッ!と私を抱き締めた。
当然、私の顔は七菜さんの胸にうずまって......
窒息する手前でタップ!
パンパン!と、七菜さんの腕を叩く。
ギブアップの意思を伝えた。
「も~、聲も生意気になっていくなー」
「調子のりました。七菜さんの気持ちが少し分かりましたよ」
「分からなくていいけど.......たまになら良い」
七菜さんが、まんざらでもないない顔をしてコツンと、おでこを当てるのだった。
私は少し、ドキリとする。
続く




