心の声が
「うひょ~!!やったー給料だ!好きなモノ食うぞこんちくしょう!」
甘木七菜さんが、手にした茶色い封筒から、10万円取り出してビシリ!と指で弾いていた。
ニシシッという嫌らしい笑顔を浮かべながら、ご満悦の七菜さんだった。
「はい。この間の借りたお金240円♪......ありがとう。この240円は、私の命を繋いでくれた240円です。ありがとう聲ちゃん」
「な、なんて、重たい240円なんだ!」
私は、命を救った240円を返してもらった。
このお金、なんかおいそれと使えないな。
貯金?
記念に置いとくのもアリかな?
って、考えてた私の手を掴んで、七菜さんはズンズン歩きだす。
「さあ!今日は奢るよ~聲ちゃん!借りた240円の利子!たっぷり返すからねー!」
「あ、甘木さん!嬉しいのは嬉しいですけど.......!そんなに返されても、恐縮です!」
「わかったよ聲ちゃん。じゃあ、縁日に行こう。屋台の食べ物なら、そんなに気を使わないでしょう?」
「は、はい。それなら.....お受けします」
「OK!んじゃ、夜に待ち合わそう」
──そして、夜の縁日で、
私は、お母さんに着せてもらった浴衣を着ている。
白色に、水色のカケアミの模様が入った浴衣に黄色の帯が後ろに大きく結ばれている。
いつものウサギさんのポシェットではなく、朱色の巾着をぶら下げている。
少し顔を上げて目線を上げると、七菜さんの顔が見える。
私の視線に気付きニヤリと笑う。
七菜さんは、甚平姿に下駄を履いていた。
そして手にした空気銃を構えて、目の前の標的を狙う。
ポコッ
「はい落ちた。聲ちゃん取れたよー。熊のぬいぐるみ!ちょっと小さいか、アハハ!」
「いえ、ありがとうございます。こんなにしてもらっちゃって」
私は既に240円以上のお返しを十二分にされていた。たこ焼き、ワタアメ、焼きそばに。
うっぷ!
.......食べ過ぎた。
もう遠慮しよう。
「七菜さ...、いや甘木さん。なんで甚平なんですか?浴衣でなくて」
「いやーお恥ずかしい。浴衣持ってないんだよねー。この甚平もほぼ家着だし。誤魔化せるかなーって。七菜で良いよ?」
思わず心の声が出てた私。
七菜さん年上なんだけど、あんまりそんな感じがしなくて、誤魔化せなかった......。
私が七菜さん呼びにするの決定みたいです。
「その代わり、聲って呼ぶね♪」
ちゃんが抜けた!
名前で呼び合うのって、すごく距離が近く感じる。不思議。
私も、見上げて言う。
少し気恥ずかしいけど、
「分かりました。......七菜さん!」
続く