虎
私は迂闊な事をしたのかも知れない.......。
2階の自室。
私は案内しながら部屋に入った。
そして、お客さんは招かれるまま部屋に入り.....
後ろ手で、ボタン式の鍵をカチリと押した。
私の前に、虎の目をした女子がいた──
「ま、待って!七菜さん、落ち着こう?」
や、やられる!
七菜さんの目が本気の野獣だ!
どうにか、この状況をクリアしないと!
確かにバディだけど、今の七菜さんに理性を期待するのは難しい......!
しかし言葉を投げ掛けて、七菜さんの理性を呼び戻そうとする私。
「ほら、とりあえず冷たいお茶でも持ってくるし!下には、お母さんもいるし。」
無言で、私を見続ける七菜さん。
圧から逃れるように、私は七菜さんの横をすり抜けて部屋を出ようとする。
──左手の手首を捕まれた。
「七菜さん。声を上げる事も出来るんですよ?」
「なら、キスで口をふさぐよ?」
「どうしたんですか、七菜さん?今日はいつもより、落ち着きが無くて、ちょっと怖いですよ?」
「ごめん聲。大丈夫な状況に居るのは、頭で分かっているんだけど、嵐を前にすると神経が、どうしても昂るんだ」
フー、フー、と呼吸が浅く荒い七菜さん。
.......!!
何が超人だ!
全然、私はこの人を見れて無かった!
普通じゃないけども、普通の女子高生だった。
年上だけど、普通の女の子だった!
ん!
と、私は両手を広げ目をつぶる。
野獣の心になっている乙女に、その身を捧げる。
「こ、聲?」
「キスは怖いから、まだ無理ですけど!でも、七菜さんが落ち着くなら私の体を、どうぞ抱き締めて好きにして下さい!」
「.......」
ゆっくりと、野獣は私の体を、ギュウと強くハグした。
かなり余裕の無い力加減だった。
強く、体と体をこすりつける様な、優しさの無いハグ。
いや、ハグじゃない。
もう抱擁だ。
.......ポツリ
ポツリ......
ザ......ザザザーー!!
窓を突然の雨が叩く音が響く。
ドドドと凄い音の中、
部屋で2人の荒い呼吸が、雨音でかき消されていく。
七菜さんは、私の首筋に顔を当てて唇を当てる。
その流れで、耳も甘噛みする。
吐息が耳にかかる。
熱い.......。
「.......駄目、七菜さん!行き過ぎちゃう.......」
か弱い言葉が、私の口から漏れた。
尻すぼみになった言葉は、熱い抱擁を止められない。
今日の七菜さんは、過去の抱擁と比べて、冷静じゃない。
嵐のせいで、歯止めが効いていない──
ガチャ!
部屋のドアが開かない。
鍵がかかっている。
七菜さんがかけた鍵。
お母さんが、お茶でも持って来てくれたのだろう。
早く開けないと。
「はーい!今開ける!」
鍵を閉めた理由を、頭で捻ろうとしながら、抱擁を解いた七菜さんの顔を見る。
物凄く寂しそうな、表情だった。
「後でね」
私は、まんざらでもない気持ちで、ドアの鍵を外すのだった。
続く




