バディ
夏休みも中頃。
今日のノルマの宿題を終えた私は、七菜さんの寝泊まりしている公園にやって来た。
暑い。
人死にが出る暑さだ。
七菜さんが心配で、様子を見に来ているような毎日だ。
この暑さの中で、街中でキャンプしているんだから、七菜さんも常人では無い。
「七菜さん、こんにちわ......って何してんですか?」
常人では無い七菜さんが、テントを畳んで旅支度をしているように見受けられるが.......いや!超人である七菜さんが、まさか!この暑さの中、ピンピンしている七菜さんが、旅支度など!
「いや、聲。やべーんだよ!暑さは、なんとかなんだけど、今日はちょいと分が悪い.......」
「まさか!転校.......?」
「いや、天候。嵐が来るぜぇ......!」
「上手い事言わんでも。いや、七菜さん!全然晴れてるじゃないですか!気の狂ったようなピーカン!どピーカンですよ!?」
「素人はそう言う......。しかし、自然を相手にしてきた私は自分の勘を信じる。その勘は裏切ってはいけない類いのものさ。聲も、いつか分かる......」
七菜さんが、何かに浸っている。
「そーですか。んじゃ、家に来ます?七菜さんを家族にも紹介しますんで。お母さん、世話になってんだから連れてこいって」
「聲.......流すな。しかし、それは願ったり叶ったりな提案だな!正直、テントが一財産だから、コイツが壊れなきゃそれでいーんだけど、いや、橋の下を覚悟していたから、助かる。地獄から天国だよ、聲」
「もちょっと気楽に頼って下さいね?バディなんですから」
「おう!いい表現だな聲!私達の関係性、まだよく分かってなかったトコあるからな!バディ。相棒か!いい言葉だ」
「えへへ。こないだTVで見ただけです」
とにもかくも、私達は私の家に移動する。
野戦のコンパクトな生活用品一式とはいえ、その移動は大変だった。
1人だったら、どうしてたことか。七菜さん超人ゆえの無茶をするトコある。
私が、気をつけて見ておかないと。
「あらあら!ひょっとして貴女が七菜さん!?まー大所帯な荷物!」
玄関で打ち水をしていたお母さんが、私達の異形を見て目を丸くする。
「ちょいと宿をお借りしますよ」
七菜さんが旅人さんだ。
ごめんなすって。って、言い出しそうだ。
お母さんは、面白かったのかクスクス笑いながら、気にしないでちょうだい!
娘がお世話になってます。
ウチくる?
最後で、私は若干恥ずかしかった。
お母さんも変にノリいいから。
「面白いお母さんだね」
七菜さんと、お母さんとの初対面は、悪くなかったかな。
第一印象よろしで、良かった。
「私の部屋、2階のここだよー」
「聲の部屋」とぶら下げたドアを開くと、
七菜さんは、野獣の瞳をした.......。
しまった.......!?
続く




