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花火大会




人が埋まってきた。

河川敷に、大人から子供まで。

カップルにファミリー、老若男女入り乱れている。

私は正直、人混みは苦手だけど、隣に手を繋いでいてくれる七菜さんがいるから、まだ耐えられる。



「いやー、やっぱり苦手だな、こういうガヤガヤした雰囲気。隣に聲いなかったら、秒で帰ってたな私」



七菜さんも、そんな事こぼしている。

私達は、似た者同士の陰の者のようだった。

でも、七菜さんは陽キャだったと思うんだけど。



「七菜さん、友達とこういうイベント行くんじゃないんですか?」




「行ってるよ、顔出しにぐらいは。花火大会も初めてじゃないし、友達と一緒に来た事はある。けど、付き合いみたいな感じ」




なんか、隣の女子高生が、サラリーマンみたいな事言い出した。

見た目は女子高生でも、中身は40を過ぎたオッサンなのかも知れない......。



「それなりに楽しんできたよ。偶然にも縁を持った友達だもの。ウマも合った。けど......」




「けど?」




「正直、記憶に残ってないんだよね。何々したー、楽しかった。ていうのは憶えてんだけどね」



「七菜さんの孤独主義が、垣間見えた.....。どんだけバリアー固いんですか......」




七菜さんの性質を聞いたら、私よく隣に居れるなと思った。

奇跡なんじゃなかろうかと思う。




「聲は......。なんていうか、本当に独りだったから。だから、隣に来たのかなあ?うーんこういうのよく分からない。結果こうなりましたーじゃ、駄目かな?」



「言わせんなよ。って感じにw」




「うん。まあ、聲と出会ってからの日々はカラフルで、記憶に目覚ましい」




「思い出してみたら、中々無い経験してますか?うん、恥ずかしい記憶が多い気がする」




「私達、そう私、じゃなくて、私達!恥ずかしいんだよね、私達」




「いや、そんな巻き込んだみたいな言い方しなくても、私達でいいよお姉ちゃん」




「.......これが、黒歴史......!」




「私は、小学生だけど、お姉ちゃんは高校生だからより痛いのは、お姉ちゃんだけどね」




「狡いぞ、聲!トモニイコウ」




馬鹿な事を言い合っていると、ドパーーン!と、一発目の打ち上げ花火の光りが私達の顔を照らす。


連発で打ち上がっていく花火。

音も凄い。

初めて、花火大会に来たけど、こういうのも風情がある。って、言うんだろな。


隣の七菜さんの顔が光りで照らされる。

真顔だ。

人の表情を見て、切ないと感じたのは初めてだった。






続く





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