焼けたのは?
ミーーーーーン
ミンミンミンミーーーーーン、
ジジッ!
.......ぼりぼりぼり。
「ひぃ!」
「ひゃあ、ほえ!んぐっ!」
ごくん!
七菜さんが何かを咀嚼して飲み込んだ.....。
見間違いであって欲しいんだけど、この夏の炎天下で七輪で炙って何かを食べていた。
時刻はお昼。
私は、七菜さんの寝泊まりしている公園のテントをいつもの様に覗いたわけなんだけど......。
「ね、ねえ、七菜さん。何を食べてたんですかー?」
「ん?蝉だよ蝉。聲も食べる?まだ一杯あるから」
ミーーーーーン!
ジジジ!
虫籠に、蝉の大群が.....。
七輪の上に炙られた蝉が.....。
「......七菜さん!!困ってたら頼って下さい!私は小学生だけど賄いぐらいなら何とかできます!」
「??大丈夫だって、聲。火を通してるから、滅多な事にはならないよ。それに蝉は前菜だよ?」
七菜さんが、ごそごそとクーラーボックスから牛肉の固まりを、効果音と共に出してきた。
「ででーーーん!」
良い霜降り肉だった。
学生の身分で食べていいんだろうか?というレベルのサーロウイン!だった。
「う、嘘。こんな高そうな肉を.....。金欠病の七菜さんが.....!いや、じゃあなんで蝉を食べて.....」
「言ったろ、聲?蝉は前菜だよ。炙ると乙なツマミになるんだよ。いやー宝くじが一万円当たってねー。この暑さを乗り切るために、精をつけようと思ってねえ。奮発したわけさ!聲も一緒に食べよう!食事は、1人より2人で食べた方が美味しい」
「ありがたく、お肉は貰いますよ七菜さん。蝉はノーサンキューです。でも、独り大好き七菜さんが珍しい事も言うもんですね?高いお肉、ひとりじめしたくないんですか?」
「蝉もいけるんだけどなあ。いや何、私は独りの時間が好きさ。この独りの時間があるから、私は私を保ててるんだよ。食事も独りで楽しめてしまう口だ。オヒトリサマ余裕だ。けどまあ、このお肉を買う時になんでか聲の顔が思い浮かんだんだよ。毎日会っているのに」
.......。
あの七菜さんが......。
なんかむず痒いんですけど!
これは、アレだ。自惚れていいんじゃないか?私。
七菜さん気付いてないんだろうか?
無自覚で無意識なんだろうか?
だったら、快挙だ私!
いや、私にも七菜さんしかいない訳なんだけど。
若干、照れで顔が熱くなる私だった。
「?顔赤いぞ、聲。水飲んどき、クーラーボックスにペットボトル入ってるから」
なんで、そんなふつーで、素な七菜さんだった。
私だけ恥ずかしい事になってる......。
「最近、動画でソロキャンプ見てさあ。こうやって豪快に肉とか焼いてみたかったんだよ。はい、こう!」
ジューーーーー!!
極太の分厚いサーロインステーキが、七輪の網の上で焼かれる音がする。
目に訴えかけてくる美味しさだった。
くそっ!
今日の七菜さん、いつもの三割増しで男前女子だ。
不要にドキメキさせられてる私。
何とか一矢報いて、七菜さんをドキリとさせてやりたい。
まだ、チャンスはある。
レアに焼けたお肉をナイフで切りそいでくれる七菜さん。
......そう。
ナイフと、トングで両手のふさがっている七菜さんに食べさせて上げるのだ。
この霜降り肉を!
あーん、だ。あーん。
パックリ
「うん。美味しい」
七菜さんの顔がいつの間にかに私の前に。
私のお箸でつまんでいたお肉を、七菜さんがパックンチョと食べていた。
「わ、わいるど!」
七菜さんの男前ぶりに、また私の顔が、不要に熱くなってしまうのだった。
一本、それまで!
続く




