モヤモヤします
手が......繋がれている手が生温い。
私は、少し目を逸らしながら私の手を握る、このお姉さん、甘木七菜さんに聞く。
繋がれた手に意識がいくのが嫌で、聞く方に集中する。
「おね.....いえ、甘木さん。どうして240円で、あそこまで泣いてたんですか?」
「いやー面目ない。バイトの給料日まで、後3日もあったから。240円あれば3日なんとかなるし」
「いや無理でしょ」
うん?うん?と、握られた手が横に振られて否定してくる。
甘木さんに握られた手に意識がいく。
やっぱり生温い感触だ。
「袋麺だけになっちゃうけどね。雑草を食べるよりはずっとマシ!本当に聲ちゃんは命の恩人だよ?見ず知らずの私を助けてくれた」
上下に振られて肯定をさした握手が、生温い感じから温かい、ともすれば熱さを感じそうになったので手を離しながら、言った。
「いや、240円貸しただけなので」
「ああ、ごめんね、ごめんなさい。手汗出ちゃったかな?最悪の状況で最高の天使との出会いが来たもんだから......1人で興奮しちゃった。ごめんね聲ちゃん」
離れたけど残っている熱を感じながら、手首をさする。
そして目を逸らしながら、甘木七菜さんに聞く。
「天使なんていませんよ?240円で天使と言われても。甘木さんは言い過ぎです」
「アッハッハッ!目の前にいるんだなこれが。聲ちゃんは、ドツボにはまってどうしようも無い時に、差し伸べられた手が、どれ程暖かいか知らない!」
ビシィ!!
と、私に指を突きつける甘木さん。
いや、暖かいというか、生温いというか、なんかモヤモヤさせられました。なんて、甘木さんは知らない。
「ところで、聲ちゃんて、名前呼びなんですね?」
「私も、七菜って呼んでいいよ。聲ちゃん♪」
「無理なんで、甘木さんで」
「そっかー残念!」
たはー!!
と本当に残念そうにする、七菜さんだった。
変な人だな。年下の私に名前で呼ばれたがるんだから。
変な人だけど、悪い人では無さそうだ。
「また公園に来てね、聲ちゃん♪」
「ええ。返してもらいに来ます」
泣いた跡も残るまぶたも閉めて、笑顔でニカッと笑う七菜さんだった。
その笑顔を見て私は、何故かモヤモヤした。悟られないように仏頂な感じで返した──
続く