チャプチャプと
プカリ、プカリと浮き輪が浮いている。
その誰も手にしていない浮き輪に向かって、私はクロールで泳いでいく。
息継ぎをして、両足をバタ足して、両手で水をかいでいく。
手の先に、浮き輪が触れる。
やった!
私の勝ち!
水中メガネを外し、浮き輪に捕まりながら後ろを見る。
後ろから、チャプ、チャプと平泳ぎで近付いてくる人がいる。
七菜さんだ。
私の唯一の友達以上の人。
甘木七菜さんだ。
「聲、早いね~。私、これしか泳げないからさあ~」
水面から顔を出しながら喋る七菜さん。
ゆっくりと、私の捕まる浮き輪に捕まった。
女子高生らしく、黄色いビキニ姿の七菜さん。
私のスクール水着とは、やはり違う。
「いや、それは太古の昔から需要はあるんだよ、聲」
貴女、いつの時代の人ですか。
後、心読まないで下さい。
最近、七菜さんが変態的なので、私がしっかり突っ込んどかないと、流されたらエライ事になる。
いや、どこでこの女性の想いに答えるかは、まだ自分
でも決めかねているんだけど。
どこかでエライ事にならなければいけないのだ。
「聲がそうしたい時を私は待つよ、我慢して。あと、エライ事じゃなくてエロイ事かな?」
「だから、心読まないで下さい七菜さん。上手くないです。露骨です」
七菜さん変態的だけど、私が待って下さいとお願いしてからは、過剰なスキンシップは控えてくれている。
女子高生だけど紳士だった。
その瞳だけは、情熱的に燃えていて、だけど潤んでいて。
そんな瞳で我慢されたら私は........
「つう.......!」
突如、足がつってしまった。
準備運動は万端にしたんだけど、左足が痺れて声が出ない。
必死に浮き輪に捕まっている。
浮き輪があって良かった。
「聲、足つったの?どっち?」
「.......ひ、ひだり」
ドブンと七菜さんは水に潜り、私の左足を伸ばしてくれる。
.......気持ちいい。
アキレス腱が延びて、痛みが引いていく。
七菜さんの手の体温が伝わって、温かさに安心を覚える。
──ここは、市民プール。
たまたまか、時間が早いせいもあってか、私と七菜さんの貸し切り状態だった。
続く




