止まらなくなるからしない
「お、おはよ~」
「おはよーございます七菜さん」
ぎこちない七菜さんの笑顔で、私は目が覚めた。
七菜さんの顔を見ようとしたけど照れくさかった。
それは七菜さんも同じらしい。
年上として頑張ってくれてる。
「もうお昼になっちゃった。何か食べよう聲」
私は、乾いている服を着ようとする。
七菜さんも自分の服を着る。
なぜかお互いの裸を見るのがはばかれた。
.......今さら感あるけど。
でも、まだか。私が怖がったから。
七菜さん我慢してくれたもんな。
「次は頑張ります!」
着替え終わった私は七菜さんにリベンジを誓う。
恥ずかしいし、こーゆーのって次あるのかどうかわかんないけど、七菜さんに赤面しながら伝える。
伝わったようで、七菜さんもゆでダコだった。
「.......ひゃい。よろしくお願いします.......」
赤い七菜さんを見て、いてもたってもいられない!そんなモンモンとした気持ちが、私の胸中に渦巻く。
下から上を見上げる様に、七菜さんの顔を覗く。
うつむき加減の七菜さんと目が合う。
視線をそらせない。
そらさない。
何かの力が働いていたのか、私の両手は七菜さんの両手首を掴んでいた。
七菜さんは力が入らないようだ。
七菜さんは目をそらそうとする。
「こっちを見て下さい。七菜さん」
手首を引いて体を密着させる。
目と目が合う。
「......聲、どうして急に.....!」
顔が近付いて、唇が見えて......
逃げられない。
逃がさない。
「そろそろ時間だでー。撤収してやあー」
──キャンプ場の管理人のお爺さんが声をかけてくれた。
掴んでいた手は離れて、私達は距離を取って、返事を返す。
『はーい!ありがとうございまーす!』
平静を装おう。
表情は笑顔でいれた。
けど、心臓の音が激しい。
自分の心臓が、こんなにけたたましいのは初めてだった。
お爺さんが去っていって、静かになる。
七菜さんと2人になる。
ゆっくりと、七菜さんを横目で見た。
.......キラッキラッした瞳でこちらを見ていた。
しまった.......。
私は何をしようとした?
七菜さんの恥ずかしがる顔を、表情を見たら衝動的にしようとしたぞ、自分。
何をって......そりゃあ。
「聲も意外に攻めるんだ♪」
七菜さんが楽しそーーだーー!!
そりゃそうだ!昨日は怖がったくせに、衝動的にあ、あれをしそうになって.....!
今度は私が真っ赤になって、顔を下に向ける番だった。
下に向けた私の顔を、七菜さんは手で上向かせる。
妖艶な、上気した顔で私を見つめる。
「聲ってば、その気が無いわけじゃないんだ」
くうう......今度は私の体に力が入らない。
七菜さんが心底楽しんでいる。
それが分かる。
「したい?キス」
問われて、私は観念して目を閉じる。
七菜さんが、近付いて、
こない......?
私が、目をそっと開けると、
七菜さんは笑っていた。
「あははっ駄目、我慢するよ聲。キスしたら止まらなくなっちゃいそう。せっかく昨日我慢したから」
.......あ、危なかった?
我が身の貞操を心配したけど、七菜さんの笑顔が苦しそうに見えて、申し訳なさでいっぱいになる。
私はひとつ覚悟しようと思った。
「七菜さん」
口を引き絞って、七菜さんの顔を見上げる。
どうしたの?という表情の七菜さん。
七菜さんに告げる。
「今度は私から行きます」
「うん、待ってる」
七菜さんは、今度こそ嬉しそうに笑った
続く




