うきゅう!?
夏休みのとある朝。
陽が上がってしまうより速く、致してしまわなければ何か?
暑くなってしまったら、やる気が無くなるのは何か?
.......勉強だった。
夏休みの宿題。
皆もあるよね?
私はラストスパート型なので、こんなに急いでやらなくても、と思う。
だけど七菜さん。
女子高生の甘木七菜さんは違った。
コツコツと、涼しい午前中に片付けて、後半ゆっくりするタイプらしい。
似合わない。
はっきりいって七菜さんのキャラじゃない。
七菜さんには、もっとおおらかで駄目な人であって欲しいのだ。
駄目な七菜さんを介抱したい......。
心の中で、愚痴やら欲望やら膨らましていると、七菜さんにあり得ない事を言われる。
「聲は以外に詰めが甘いよねえ.....?キャラじゃないというか、コツコツ努力家なイメージあったよ」
「なっ!?」
今しがた考えていた事と相まって、ショックで動きが止まる私。
「ん?消しゴム落としてるよ?聲」
はい、と。
消しゴムを手渡しされて、手が少し触れる。
ツツイと、七菜さん指先で私の手のひらをなぞった。
「ぴゃい?!」
変な声が出る私。
「聲は以外に、チョロインだねえ。チョロチョロだよ」
確かに隙が多いのを認めざるを得ない。
ぐぬぬっ!
チョロチョロって、山の湧き水じゃないんだから!
絶対それ言いたかっただけだろ!
「うん♪だからセクハラしたの♪」
いい度胸だあ!!
私もやり返してやる!?
セクハラの倍返しだ!
「ふ~ん?聲の手相、生命線長いね~」
七菜さん更に、私の生命線をツツイとなぞる。
すると私も声が出る。
「うきゅう!?」
「あっはっはっ!なんだかイケない気分になっちゃうなあ!そろそろやめとこっか?」
........存外、自分が攻められて弱かったのに、ショックな私。
抗議の意味も込めて、キッ!と軽い涙目で七菜さんを睨む。
「なるほど。この世からいじめが無くならない原因が少し分かった」
七菜さんが私を肉食動物の目で見た。
ひっ!
あの、とぼけた隙だらけの、安心感の七菜さんじゃない!
最近の七菜さんは、安心感より気持ちが不安定な、ドキドキさせられる。
被虐的な私の表情を見て七菜さんのスイッチが、オープンファイヤーしたらしい。
「聲。本当に友達以上になろうか?」
手を握られ、顔が近い!
目を反らしたいけど、七菜さんの瞳から逃げられない。
頭がグルグル、目はチカチカだ。
も~駄目だ!
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
ピピピピ!
「おっと時間だ」
スマホからタイマーが鳴って、私達はそそくさと戻る。
午前中の勉強の時間が終了した合図だ。
あ、危なかった。
まだ胸がドキンコしてる。
「聲以外に受けだねえ。今度は攻めてみる?」
「え、ええっ?!」
こ、この人何でもありか?!バーリトゥーダーなの!?
「ふふっ嘘だよ」
赤い顔した私の頬を撫でながら、七菜さんは笑う。
「でも、そんな気分になったらまたしましょ♪」
撫でられた頬が冷たくて気持ちよくて、目を閉じてコクンと首を縦に降る私だった──
続く




