サバイバルだった七菜さん
「ん、聲おはよー」
夏休みに入って間も無くの朝、公園にいくと七菜さんが、水道で顔を洗っていた。
げ、七菜さんの頭の上に、なんか虫が乗ってる!
「な、七菜さん、む、虫が......!」
「うん?あ、ありがと。青虫、頭に乗ってたわ。アハハ」
べっ、と青虫を草むらに投げ捨てた七菜さん。
手掴みでって.......。
健康的な褐色の肌に、短髪の黒髪。
性別問わないってのなら、よっ!男前!
「七菜さん、変なとこで豪快ですよね。公園の水で顔洗ってるし......」
「うん。なんならこの公園に住んでるしね」
「え。?!」
何か聞こえてはいけない事が聞こえてしまったような気がした。
まさか.....。いや、まさかでしょ!!
いくら七菜さんといえど......!
「ほら、この裏手にマイテント。キャンプ、キャンプ」
私の目の前にテントがあるし。
朝食の後かな?小さいお鍋が。
キャンプというより野営。
生活感溢れ過ぎていて。
私は七菜さんに聞かざるを得ない。
こんな地雷があるなんて......。
「七菜さん、七菜さんも女の子なんですから、1人暮らしはともかく、なんでキャンプなんですか!」
「いや、身軽で、敷金礼金いらないし」
「実家は.......」
「親と折り合い悪くてさ!」
七菜さんは、テヘペロ!したけど、これは看過出来るレベルではない。
とはいえ、私も一介の小学生。
さすれば、七菜さんに思い止まってもらう。
ぐらいしか出来ない。
「七菜さん。暴漢に襲われたらどうするんですか?」
「この近辺、平和だから。今んとこ出てない」
「野良犬とか......」
「も、だいじょーぶ」
だ、ダメだ。この人の危機意識が、ガハガバ過ぎるのは分かった。
ワイルドじゃなくてデンジャラスな人だ。
「1人が一番!世は全て事も無し!雨の日は少しキツイけどねー♪」
い、いや、七菜さん、そんな方向に振り切れないで下さい!
そんな変な七菜さんは嫌だ!
顔を見合わせて、七菜さんの目が私を射ぬく。
「ごめん、聲。1人が気楽ってのは本音」
ひっ!
240円落として、本気で泣いて、
何か変な安心感のある人で、
お姉さんのようで、同士のような、
そんな、七菜さんだから、そんな台詞を言って欲しくはなかった。
私は、その場から、七菜さんから走って逃げた。
続く




