お金落としたの.....
「この物語、是とすれば可か。ならば非とはできんなあ。ふむ。娘、この物語にどう応える。俺の家に転がりこんでくるか?」
怪しい天狗のお面を被った着物の男が聞いてくる。
余りにも怪しい。
私ぐらいの歳でも分かる。
でも、そんな怪しい人と公園のベンチで隣同士で座って、お話ししていた。
「いや、変な人についていっちゃ駄目って、お母さんに言われてるから......」
「成る程。まっとうな親だ。いい母親を持ったな娘。しかし、俺は変な人では無いぞ。そこだけは訂正しておく。まあ、歳の差を超えたお喋りは楽しかった。若い娘というには若すぎたが。だが俺のアンテナに引っ掛かるだけはあった。じゃあな。大したもんだったぜ娘」
「うん。天狗のおじさんさようなら」
天狗のおじさんが、ベンチから立ち、バイバイと手を振る。やっぱり変な人だ。
だけども、そのおじさんとのお喋りは楽しかった。
何を言っていたのか、ほとんど分からなかったけど、なんだかフワフワした気持ちになったのだけは分かった。
あーこれが楽しかったんだな。変なおじさんだったけど。
公園のベンチで座りながら足をぶらぶらさせていたけど、よっと!地面に着地。
私もそろそろ家に帰ろうっと。
お母さんには、今日の事は言わない方が良いな。
心配かけちゃうし、私の自由も狭くなりそうだし。
「あ~!!やってもたー!!」
私の前に居たお姉さんが、両手を顔に当ててオーマイガッ!っとしている。
無視して横を通り抜けよう。
横をすり抜ける時、お姉さんの手に覆われた顔が、チラリと見えた。
「.......ぐす.......ぐす!」
めっちゃ泣いてた。
ウワー。こんな年上の人が泣いてるの初めて見た。けど私は見てしまった。見てしまたから無視出来ない。
「あの。大丈夫ですか?」
私は、ウサギさんのアップリケのついたポシェットから、ハンカチを出してセーラー服のお姉さんに差し出した。
お姉さんは、両手に顔を被せているそのままの状態で、ビクリ!!と身体を震わせた。
あっ。びっくりさせちゃった。
「あ、ありがと~」
グシッ!グシッ!
っと、涙を拭くお姉さんだった。
しばらくそのお姉さんを見ている私。
お姉さんはボーイシュッな短髪で、健康そうな日焼けのした色黒の肌だ。
部活というやつで、水泳でもしてるのかな?真夏だしね。
それで、泣いてるのはびっくりしたけど、綺麗というよりは可愛い顔立ち。
「お姉さん、どうしたの?」
小学生の私からしてみたら、こんな大人が本気で泣くという状況は、どういう事か、まったく分からない。
お姉さんが、ひっく、ひっくと泣くのを止めて、しゃっくりをしている。
あ、喋りそう。
「おがねおどじぢゃっだの~」
再びワッ!と泣き出すお姉さん。
これ、どうしたら良いんだと、途方にくれる私だった。
続く