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第52話 再会そして愛してる


さて、第一章もいよいよ佳境に入ってまいりました!


 

 パルネは見つけた。崩れ落ちた床下は、松明も消え真っ暗で、埃もまだ収まらずに視界も本当に良くないが、地の底に金色の光に包まれたルナがはっきりと分かった。なぜそんなところにいるのかは、理由わけは知らない。でもいつも教会で、ミサで、部屋で、笑顔で一緒に過ごしたルナだと確信した。


 伏していても間違えようのない姿。小柄なルナを見つけたパルネは感極まり、大声で呼びかけている。床にできた穴へ身を乗り出し、右手を伸ばす姿は今にも転落しそうな勢いだった。


「ルナ――――――!」


 この声に気づいたガスパルも慌てて牢屋から飛びだしてきた。


「何をしてるの! 早く起きてよ! ルナ早く!」


「危ない! 落ちるぞ」


 ガスパルは身を乗り出していたパルネの肩を掴んで諌めた。


 それでもパルネは必死に呼びかけていた。この声が届いたかどうかは分からないが、ルナは吹き飛ばされて、うつ伏せになった体をゆっくりと起こし始めている。この間にも地下二階の天上の亀裂は大きくなっており、今にも崩れ落ちそうだ。それを示唆するように、亀裂のすき間から石屑が落ち続けている。


「あつっ、痛たた……ゴホッゴホッ!」


「ごめんよルナ! 大丈夫かい! しっかりして、奴らはまだいる」


「インフィニティ助かった……ゴホッ、うっ、ちょっと痛かったけどね」


「ルナ、それとほら上を見てよ」


「えっ? なにが……あっ!」


 インフィニティが指さした頭上を見上げると、天井にほんのりと明かりが差し込む大きな穴が見え、その明かりの陰の中に人影らしきものが揺らいでいるのが判った。


 さらによく見ると自分の名前を呼び続けている人がいる。ルナは、肉眼で見るパルネの姿に歓喜した。久しぶりに見るお互いの姿に名前を呼んだ。


「パルネ!」「ルナ!」


 言葉を止めて見つめ合う二人。パルネが生きているのは知っていたが、ルナにとって待ち焦がれた再会に、力強くその身を起こした。体を起こす手の下の瓦礫の角が、手を傷つけ音を立てて崩れるが、そんな事は関係ない。早くそばに駆け寄りたいその一心だった。


 しかし、そんな願いを遮る音と雄たけびが響く。


 ガラガラガラッ、ゴゴゴゴゴゴゴッ。

「グワアアア――――――ン!」

「グァアアアアアア――――!」


 地下二階の石の支柱が崩れ始めた音と先ほど吹き飛んだオーガらが体勢を立て直し起き上がってくる雄たけびだ。支柱が崩れ始めたことにより地下一階では床が唸り始めて今にも崩落しそうになっていく。亀裂から落ちてくる石屑の量が増え、ルナの周りへも石つぶてのように降り注ぎ、その危機が迫っている事は黙っていても理解できた。


 メキメキメキ! 更に悪い事にルナの後方の階段にも大きく亀裂が入る音が聞こえてきた。崩れ落ちる音、体に降り注ぐ石屑やオーガの雄たけびは、パルネに駆け寄りたい気持ちを一瞬にして消し去さってしまい、ルナの心は冷静さを取り戻して行く。


 ……ダメ、駄目だよパルネ。早く逃げて、ここはもう崩れ落ちる。


 ルナはそう考えると頭上のパルネを見つめて、にっこりと笑顔で口を開いた。


「パルネ、私は大丈夫だから早く行って」


「バ、馬鹿な事言わないでよ! また会えるなんて思いもよらなかったのに!」


「本当に心配ないから、早く逃げてね」ルナは、笑顔を絶やさずに語りかけ続けた。


「やだやだやだ! 一緒に行こうよ!」


 囚われてから冷静に自分を見つめていたパルネだったが、こんな状況にも関わらず笑顔で話しかけてくるルナのなにかを感じて彼女は取り乱している。


「ウオオオオオオオオ――――ン!」「ガハハガガガガア!」


 大声と共に暗闇の中で赤い目が立ち並んで行くのがルナの視界に入った。いや、目で見たのではなくその姿をはっきりと感じとっている。冷静になって、先ほどから見ずとも理解できるその感覚は、インフィニティからの視覚情報の共有ではなく、周囲の事を見渡すだけではなく、一定期間への未来視などを持つテラ神の巫女の力だった。


 ……来た。これで大丈夫だ。


 ルナが感じてほどなく、地下一階のパルネやガスパルの元へ走って来るデュオの姿があった。彼はもう一人の身ごもった娘を砦跡の外へ避難させ、パルネの元へ駆け戻って来ていた。


「おおおおい! 何やってんだ! やっべえぞ! 早く来い!」


「おお! 若造、いい所に来た手伝うんじゃ!」


「判ってるよ! おいシスター行くぞ!」


 二人の側に来たデュオとガスパルは会話を終えると、急いで牢の中に残していた身ごもった娘をデュオが、マスターセイドをガスパルが各々肩に担ぎ、飛び出すように出てくるとデュオはパルネの片腕を強引につかんだ。その間もパルネは必死にルナに呼びかけていたが、ルナは静かに黙って佇んでいる。


「早くしろシスター!」


「やだ止めてよ! そこにルナがいるの!」


 パルネは必死にデュオへ抗っていたが、地の底のルナはパルネらを見上げて再び、にっこりと微笑んでいる。


 ……パルネ、ガスパル、さあ早く逃げて。ここは私とインフィニティで十分だから。


 暗闇の中で微笑むルナの姿から、そんなルナの考えが二人には聞こえたような気がした。


「ルナお前まさか!?」


「駄目よルナ! 早くこっちに来てよ!」


「二人ともうるうせえよ! 早く行くぞ!」


 ガスパルは驚いていた。今、自分の心にルナの気持ちが伝わって来たのではないか、そんな事が昔あったなと思い出していた。


 ……これは以心伝心に違いない。……ならばわしに今できる事は、ルナが望むパルネらの無事。ここから逃がす事だけじゃな。


 ガスパルはルナを笑顔で見つめ返すと、傍らの嫌がるパルネを振り返り怒鳴りつけた。


「馬鹿もんが! パルネよ立て! そして走れ! ルナの気持ちを無駄にするんじゃない!」 


「急ぐぞ! ほらまた床が崩れて来た!」デュオも必死にパルネの腕を引っ張った。


「やだやあ――――!」


 こうして、デュオとガスパルは嫌がるパルネを、強引に引きずるように穴の縁から離れていった。


 やっと皆が砦跡の外を目指してくれた事に安堵したルナは、迫ってくるオーガ達を睨みつけている。ルナの考えを察したインフィニティは、力を行使するなら二人が一つになった方が強力に作用できると妖精からルナの中に戻った。


 ……ふう、やっと行ってくれたか。でもあの男、むかつく。


 ……仕方ないんじゃないかな。


 ……まったくもう、インフィティは私の気持ちがわかるんだから、少しは察してよね。


 ……ははははは。


 ……もう階段もほぼ崩れて逃げられないし。力を使えば間違いなくここ全部が崩れ落ちてきて……。まあ仕方ないか。


 ……ルナ、ほんとにいいの? 


 ……うん、いいよ。パルネが助かればそれでいいし、側にはインフィニティがいるしね。もう思い残す事もないし……いや、パルネは幸せになってほしいかな。


 ……ルナの気持ちはよくわかるよ。あっ、皆が外に出たみたいだ。ではそろそろだね。


 ……短い間だったけど、私はインフィニティに出会えてよかったよ。本当にありがとう。


 ルナはその言葉を最後に、その両手を伸ばすと眼前に迫ったオーガ達に向けて、原初の素粒子(インフィット)を今までの量をはるかに超えて集めてゆく。膨大な量のインフィットがうなりを上げて回転を始めると一瞬にして煌めく光球が生じた。




「うおおおおおおお――――――! 消えなさい全て! 私達が滅ぼす!」




 ルナが魂の底から叫びをあげると、インフィニティの魂も同調して行く。目の前の異界の物を滅するために、二人は力の限りを行使した。


 眩い金色に煌めく巨大な光球は、十匹のオーガ達と地下二階の全てを包みこんだ。同時に今までルナ達が感じた事のない凶暴な暴威が振り撒かれ、それに耐えきれない周囲の全てが破壊され、悲鳴を上げるかのように音を立てて吹き飛び弾けていく。




 それでもルナは微笑んでいた。ルナには何も怖いものはなかった。





 ……真っ白だね、インフィニティ。





 ……みんな、ありがとう。愛してるよ。





 ドギャギャギャギャギャゴゴゴゴゴオゴゴゴゴコゴオゴゴゴ――――――――――!




 砦跡に轟音と激しい閃光を放ちながら、直上へと巨大な光の柱が顕現し、地下や地上の建造物が瓦礫となり吹き飛んで行った……。


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