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ハスと僕の生活

三題噺:「全自動洗濯機」「ポケットティッシュ」「ハサミ」

キミは洗濯機でポケットティッシュを洗うとどうなるか知っているか?

知らない人は幸運だ。そのまま気をつけていてほしい。

知っている人は同士だ。そして今、僕に解決方法を教えてくれたまえ、いますぐに。


「殴りにいきたい......」

尻ポケットにポケットティッシュを入れておいたことを失念したまま、買ったばかりの全自動洗濯機に放り込んだ犯人を。数秒の方針のあと、そう呟いてへたり込んだ僕に、ハスがキュルキュルとモーター音を立てて近寄ってきた。

『暴力行為を求めることは何らかの問題が原因の可能性がありマス。ヘルスケアサービスに相談しますカ?』

「や、ごめん、ただのひとりごと。大丈夫、ありがとうハス」

キャスターのついた高さ60cmの円柱の、ちょうど顔にあたるだろう部分に貼り付けられたディスプレイが、心配そうな表情を表現して僕を覗きこんでくる。

HealthAssistantServiceの名前がついて爆発的に売れた、生活サポートロボットだ。


ハスはドラム式全自動洗濯機に気づき、そこに主人の落ち込みの原因があると察したのか、手早くアームを伸ばし、カメラで中を見聞した。

『ナルホド、繊維が貼り付いてしまっていますネ。お掃除しますのでお待ちくだサイ』

「えっそんなこともできるの!」

『ハイ。トラブルケースのナンバー814で対応可能デス』

同僚が、お前まだハスを買ってないのか、あれは高いけどさっさと買うべき、と焚きつけてきた理由がわかった。まだ買って3日目でこんな価値を発揮するとは。やっぱりハスをさっさと買わなかった過去の自分を殴りにいくべきではないだろうか。


ハスは両手のアームを器用に操って、洗濯機内に貼り付いた繊維の塊を丁寧に取り除いていった。人間がやるとあっちこっちと適当にやるのかもしれないが、ハスの場合は順序が決まっているらしく、上部から時計回りにきちんと綺麗になっていく。関心して一通りの作業を眺めていると、ハスは一度バスルームから撤退するために後退し始めた。

『アッ』

「あっ」

ロボットでもそういう時に発話するんだなとうっかり感心してしまったが、ハスはいきなり急停止したかと思うと、綺麗に後ろ方向へ倒れ込み、後頭部にあたる部分を打ち付けた。

なんだか奇妙な調子の短い音楽がハスのスピーカーから流れ、

『キャスターに不具合、問題を解決してください』

と告げた。

「うわぁ、大丈夫か。どうした、どうすればいい?」

正直なところ機械音痴気味で、この3日間はハスのやることなすことに戸惑っていた僕は、今回もまったく同じ発言でこのロボットの指示を仰いだ。

『おそらくキャスターに問題があると思われマス。確認していただけマスカ?』

ハスの足に当たる部分に注視する。

「わかった、髪の毛が絡まっちゃってるね」

『トラブルケースのナンバー32を適用しマス。ハサミで髪の毛の除去をお願いできマスカ?』

さすがにハスも自分で自分の足の裏の解決は難しいらしい。たしか規程で刃物は持てないようになっている、という紹介番組のコメンテーターの言葉を思い出した。


僕はハサミを道具入れからひっぱり出してきて、ハスのキャスターそのものや部品を傷つけないよう、丁寧に絡んだ髪の毛を取り除いた。

キャスターの回転に問題がないことをチェックして、ハスを垂直に起こす。

『キャスター点検、異常ありまセン。ありがとうございまシタ』

ハスは倒れる前に予定していた掃除の作業にスムーズに戻っていく。


ハスから助けを求められたのは3日間過ごして初めてのことだった。

なんだか自分のやることがすっかり無くなってしまって、漠然と不安を感じていた僕だったが、少し元気が出たのは何故だろう。

「まぁ、僕にもできることがあるっていうのは、良いことだ」

ハスを救ったハサミをちょっと眺めてから、僕も道具入れの片付けをするべくリビングへ向かった。

会社のルンバがこうなっちゃうのを解決したことがある。

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