#7 俺の布団と、ガマンできない後輩と、女騎士。
夜の帳も下りきって、虫の鳴く音に、女騎士に剥かれて俺の泣く音が入り交じる頃、玄関から控え目なノック音が響いてきた。
む。こんな時間に誰だろうか。まさか、ご近所さんが抗議しに来たのか?
「先、輩……? 居ますか?」
聞こえてきたのは、少し蒸し暑くなってきた夜に、優しく揺れる風鈴のような声――これは。
「夏音か!?」
やべえっ! なぜこの危険な時間帯に!?
朝か昼か夕方じゃないと駄目ってあれほど言ったのに!
『貴様ァッ!? 私を弄び孕ませただけでは飽きたらず、更に酒池肉林しようというのか!?』
「お前は黙っててね!?」
なんということだろうか! 最悪だ! 最悪のタイミングだ!!
どうする!? どうやって切り抜ける!?
「先、輩!? 今の女の人の声はなんですか!? そこに誰か居るんですか!?」
控え目だったノック音が、急に切羽詰まったような音へと変わった。連打だ。音ゲーや太鼓の職人のような怒濤の連打だ。
「い、居ないから! 誰も居ないから、夏音はちょっと待ってて!?」
『嘘をつくなこの変態がッ!! 私を辱しめたくせに!! このヤ○チンが――ッむぐぐぐっ』
「いいからお前は黙ってようね!?」
俺を剥いた挙げ句に、変態呼ばわりしてきやがったうるさい女騎士の口にガムテープを巻き付けて黙らせると、俺は一か八かの賭けに出た。
「せ、先輩、誰と居るんですか!? 先輩!? 教えて下さい!!」
くそッ。こうなりゃヤケだ!!
「わ、わかった! 言うから! 言うから落ち着け夏音! あれだ、AV! AVな! 男には賢者に至るための道程があんだよ!! わかったなら今日はお引き取りくださいお願いします!」
「私も見ますっ!!!!」
「なんでっ!?」
バカなのっ!? 俺の優しくて頼り甲斐のある幼なじみの後輩は、こんなにバカだったの!?
「義務です! 先輩と一緒にえっちなビデオを見るのは後輩の義務なんですっ!!」
「ないよっ!? そんな義務ないからねっ!? それとこんな時間帯に玄関先で大声でえっちなビデオとか言わないでねっ!?」
『むぐぐー! むぐぐーっ!!』
「先輩、もう我慢できません! 私も見ます~~っ!!」
夏音が力いっぱい叫んでドアノブを回すと、ドアノブが飴細工のように“ぐにゃりと”ねじ曲がった。
――はいっ?